よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

香港病院視察

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香港で、知人が脳梗塞で倒れたとき、驚くほど低いコストで公的病院での手厚い医療を受けた話を聞きました。香港では富裕層はプライベートな病院に高いお金を出して診療を受けるけれども、公的病院にも多くの優れた医療があり、お金のない、あるいはお金をかけることができない市民を守る機能を果たしています。
 
また、優れた仕組みとして、公的病院毎に同じ診療科をできるだけ持たず、病院機能を強化しているという話も聞きました。合理的ですね。写真は香港の九龍にあるクイーンエリザベス病院です。脳外、心外等急性期につよい病院です。目のキラキラした若い医師が多く感動しました。
 
2013年現在ですが、最高税率は17%(法人税率16.5%、個人税率15%、個人標準税率15%ただし累進で17%まであり。)で、かつ余剰の資金を国民全員に返す国である香港は、小さな国でありながら小さな政府と効率的な政策運営を行い、子供の教育においても、平均寿命においても世界のトップクラスの成果(2010年男が80.0年、女が85.9 ちなみに日本は男が79.64年、女が86.39年。つまり男は香港に抜かれています)をあげています。
 
医療においても、社会保障制度が整備されていない環境(一般的に民間の医療保険に入る人も多くいますが、公的な健康保険の類のものはありません)のなかで、懸命に働いて成果をあげようという国民はほとんどお酒を飲まない生活をするだけではなく(これは中国でも同様です。お酒を飲んで翌日の仕事に集中できないのは問題であるとの認識があるようです)、日々健康管理に余念がないという状況をつくりだしています。漢方薬のお店もそこここにあります。
 
先ほどの公的病院には多くの篤志家から多額の寄付があることで、診療報酬をまるでタダに近い金額で、医療を受けることができる環境をつくりあげていることは驚きです。
 
健康はまさに自己責任ながら、しかし弱者を守る機能がビルトインされているだけではなく、それを質の高いレベルに引き上げていく医療従事者の精神性もそこにあることが素晴らしいと考えています。
 
富裕層とそうではない国民の医療機関のすみわけもできているし、また国民が健康管理を生活習慣にしていること、また国民であれば平等に医療を受けることができる文化や環境をつくりあげている富裕層の力も素晴らしいと思います。
 
以前香港で開催された東アジアサミットで、どこかの国の大臣が、香港はすべてのシステムにおいてもっとも成功した国であり、他国の範となるという趣旨の講演を聞いたことを思い出します。
 
日本の医療は財政問題をはじめさまざまな問題を抱えていますが、優れた成果をあげてきたことは間違いがありません。これからも、国民の全的な協力を基礎として、よりよい医療制度や医療をつくりあげていくことができると確信しています。
  
最近、そうした認識を持つ傾向にもありますが、さらに医療を大切にする、そして守るのは医療従事者だけではなく、(私も含めた)国民一人ひとりの行動であるということを心底理解することができれば、医療は次の段階に進めるのではないかと考えています。