よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

厳しい現実を目の当たりにして考えること

30年の改定により、うまく成果を挙げている病院とそうではない病院があります。前者は、国が求める政策を取り入れ、人員を集め、行なうべきことを行っている病院です。後者は、ルール通りにしようとしてもできていない病院です。その差はどこにあるのかはとても明確です。
日常的に組織づくりを行っているところと、そうではないところの差が明確に出ているのです。
組織づくりとは、目標を決め、決めたことを実行する体制のことを言っています。組織目標が決まると、各部署が行うべきことと行うことができるよう、各部署の幹部が動きます。病院方針を各部署方針に落とし込み、落とし込んだ方針が自然に各部署に落とし込まれながら、構成員がなんとか方針を達成しようと能動的に行動し始めるのです。毎月の成果は確認され、検証されて、できていないことが明らかになり、何とかそれをできるようにしていこうと各人が協力して行動します。目標管理制度や評価制度、教育制度が整備されるとともに、委員会活動はいうに及ばず、業務改善や日々のコミュニケーションの円滑化など、さまざまな活動を積極的に行われます。

また。その組織は、何かあったときに、トップのリーダーシップが発揮され、どのようなことにも柔軟に対応できる組織です。このような組織は、どのようなことがあっても成果を上げ続けることができます。人も集まるし、定着率も高いので業務は滞ることはでありません。
経営企画や医事が制度をしっかり咀嚼し、具体的な行動にまで昇華したうえで、実務が行われます。個々での肝はリーダーシップです。適切なリーダーシップが発揮される環境がなければ、このような状況をつくり出すことはできません。
リーダーに信念があり、マネジメント能力に優れている。知識や経験がなくても、うまく人を使い、できる人、あるいは、例え常にできる人を傍に置けなくても、そのつど、あることができる人を探し出し、業務ごとにミッションを与え、成果を挙げるよう誘導することができるリーダーが求められています。
思いがあり、信念により思いを意志に変え、経営に必要な技術を身に付けるとともに、豊かな人間性をもって他人とコミュニケーションがとれる人です。
こうしたリーダーがいれば、職員は力を発揮し、皆が一つの方向を向きながら成果を挙げるために頑張ることができます。

これからの日本の医療はとても厳しい環境に置かれます。マネジメントの巧拙により、病院の盛衰はきまります。新しい時代をつくるためにも、原点に戻り、自院のマネジメントの仕組みがあるべきものになっているのかどうかをしっかりと確認してみることが必要です。
なお、うまくいかない病院の事例を一つだけ紹介しましょう。医療療養病床1の1病棟と医療療養病床2の1病棟をもった病院がありました。今回の改定で病院として医療療養病床1、すなわち医療区分23の患者を80%とらなければならないことになりました。日常的にガバナンスがなく、変化にうまく対応できなかったために、23区分の紹介を増やすこと、看護師の看護レベルを上げること、職員の定着率をあげることがうまくできず、目標を達成することができません。
リーダーは、「うまくいかないのは人材がいないためなので、仕方がない」というスタンスです。結果、医療療養病床1をとるために、、医療区分1の患者を減らすことになり、単価はあげることができても、稼働率を落とさざるをえず、結局は以前より収益を落とすことになります。こうして、診療報酬の改定があるごとに、達成できないことが増えていき、結果として業績を落とし病院が淘汰されていくのだと思います。
リーダーの覚醒と適切なマネジメントが行われなければ、病院は継続していけないと、理解をしています。

イメージ 1