よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

クリティカルパスのすごさ(2)

 パスによる業務改革ですが、
(1)パス通りに治療が行われない
(2)パスの現状とあるべき形との乖離がある
ということを着眼とすることは明らかです。

(1)は、バリアンスマネジメントから発生します。バリアンスとは標準との乖離(標準からの逸脱)をいうわけですが、変動についても対象とします。変動は標準からは逸脱していないものの、標準とは異なる治療を実施したということと定義しています(バスを使えないほどの常態となるケース=当該治療を継続できない。

 別の疾患の治療を優先しなければならないケースはパスを利用できないということで脱落としています)。

 バリアンスには正のバリアンスと負のバリアンスがあります。正のバリアンスは計画よりも早期に治療が完了すること、負は逆です。バリアンスはコードにより管理することになりますが、要因は4つあります。ⅰ)医療従事者要因ⅱ)システム要因ⅲ)患者要因ⅳ)社会的入院要因といった分類に区分できます。

 ⅰ)は医療従事者の指示ミス、指示忘れ、インシデントやアクシデント、休日や予定外行動等々が、そしてⅱ)業務フローや業務システム、さらには制度や手順から発生する問題課題ⅲ)は固体による治療遅れや、患者によるアクシデント等々そしてⅳ)家族が帰宅を拒否したり、介護認定で時間が必要、あるいはもう少し病院で療養を、さらには施設待ち等々の要因が該当します。

 正であればパス日数短縮要因となりますが、負は退院日が遅れることを意味しています。まずは一次パスからバリアンスを発見し、そこでその原因を事前に排除あるいは予防することにより、パスで設定した日程で管理できるよう業務改革を行うことが必要となります。勿論教育レベルでの対処が必要で、個人のスキルに問題がある、あるいは行動に課題があるのであれば、徹底的な訓練が業務改革の埒外で実施されることになります。
 
 常に現状とパスとのギャップを埋める活動を行うことのなかで、あらゆる業務の見直しが行われる着眼が得られるということを意味しています。バリアンスをより詳細に分類することにより原因が把握できやすくなりますが、そのことにより、より詳細な業務改革への対応ができるようになります。

 正のバリアンスによる在院日数短縮は、勿論、パス自体の日数を短縮することになります。偶然ではなく合理的なエビデンスに基づき、治療の日数を短縮できるということが明確に仕組み化されることが必要です。統計的なアプローチと、合理的な理由による処置の前倒しを伴う活動が行われなければなりません。少し難しくなりますが、アウトカム=ゴールの基準を議論することになります。退院許可を出すCI(クリティカルインディケータ)を明確化し、定量的に医師の判断基準を確立することもパスで設定した日数を短縮する要因です。疾患によっては検査データだけではなくADLのデータなどがCI化されることになります。
 この段階になると自院(それも自院の治療に起因する事項の変革)によりどこまで在院日数を短縮できるのかといったことの活動への展開が行われます。結果としてパスの日数が変わったときにパスの名称は二次パスに変わります(って、なんか教科書みたいになってしまいましたがすみません。書きなぐっているので、丁寧ではない記述もありますがお許しを…)。

 パスのすごさの第二は、パスを利用することで意思決定を行う基準が確立され、医療の質向上や結果としての生産性のまた科学的(体系的、継続的)な管理が実施できることであると考えます。
 次にはパスのすごさ第三弾を説明します(続く)。

「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」