よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

日本を救う地域支援協議会(1)

 20年4月から開業医の診療報酬が下がるといわれています。その理由の一つとして在宅医への誘導があげられています。勤務医の労働環境の改善や報酬の是正といったものもあるかもしれませんが、何よりも在宅医を数多くつくるということが目的であると考えています。
 
 DPC下においてどうしても医師が現場に張り付く必要があります。多くの医師が在宅療養支援診療所を開設し、多人数(4~7人程度)の規模の在宅医もかなり数多く地域で活動するようになりました。しかし絶対数が明らかに不足しているということがあるのでしょう。
 療養型病院も減少、回復期病院がつくられるとしてもベッドは足りない。施設介護も介護保険の給付を下げざるを得ない日本経済のもと、どうしても破綻の方向に向かいます。

 医療法人が適合高齢者専用賃貸住宅の展開を付帯事業化しているのも、結局はベッドは減らしますが、在宅にちらばせるとリスクが高まるので、一つのところに集めてね。といった国の考え方であると考えることが相当です。
 そもそも開業医の先生はリスクマネジメントや高齢者の在宅での処置、褥瘡やIVH、酸素、ペグの管理に長けているはずがありません。彼らがどっとマーケットに出てくればどのようなことになるのかは用意に想定できます。
 
 ヘルパーや訪問看護ステーションの看護師がいったいどこまでクオリティの高い看護や介助をしているのかについて誰も評価していない現状で、さらに不慣れな医師が多数現場にでてきたときの状況は容易に想定することが可能です。
 阿鼻叫喚の世界が繰り広げられるということです。だから高齢者専用賃貸住宅なのです。一つに地域の患者や利用者をまとめることによりリスクの逓減や生産性の改善が行われることは間違いありません。

 しかし本質的なところでの医療の知識やスキルはどうしても基幹病院の医師が彼らに指導していく必要があるというのが私たちの考えです。末期がん患者のケアをどうして地域の医師にいきなりまかすことができるのでしょう。
 
 医療の知識や経験だけではなく、メンタリティやサイコロジーについての対応をどうするのか、そして、何よりも従来は外来で診察していた環境から家庭のなかに介入し、ぐじゃぐじゃ(表現の品が悪いですね…)になりながら患者を診ていかなければならない環境に置かれる医師を誰が支えていくのかという問題が発生します。

 それは基幹病院の役割であると思うのです。病院にいるから私の患者です。外に出たら関係ない、ということではないと考えます。ただAさんの生活全般を急性期病院の役割のなかで診ることができないのはあたりまえです。あくまでも思考や思想的な意味で説明をしています。急性期の役割は担います。しかし、早期に病院からでてもらうためには、従来急性期で担っていた役割を地域に移管した部分についてのサポートが必要であるということを言っているのです。

 地域支援協議会はそうした発想に基づいて組成します(続く)。


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