よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

人がやる気になる理由(4)

 シリーズ最後です。
 
 組織風土・文化について説明します。組織風土や文化は働いている人の行動様式です。組織のルールは過去のそうした人々の蓄積の結果であり、また、現在においてはそこで働いている人の行動や態度、仕事の姿勢といったことに顕在化するものをさしています。
 
▽よい医療をしようという意識、執着
は、医療の基本的な傾向であり、この方向性がなければ、どこかで自分の行動や医療がもつ機能、性質と合致しないところが露見し、職員の気持ちのなかに違和感が生まれます。
 
何かおかしいなという思いがいつもどこかにあり、しかし自分はそうではないと思いながら仕事をしていると、徐々に組織の考え方と個人の考え方の間にギャップが生まれ、仕事に対する意欲を失うことになります。
 
ことあるごとに「そうではないのにな」ということがあると、行動そのものに納得できず、精一杯力を発揮することもできなくなります。
よい医療をしようという意識がない組織、執着がない組織は、心ある職員に見透かされ離反を招くことが明らかです。
 
人は誰でも、現状を打開し、もっと先に進もうという意欲があるものです。発現していなければそれを阻害するネガティブな何かがある。それに気が付く必要があります。あとで人生が短かったということに気付くのではなく、いま気が付く。そして、残りの人生をどのように生きるのかについて考えれば自分の証跡や歴史をどうつくるのかというところに思いを向けることができるようになると思います。
 
後悔しない。生きた証を少なくとも自分のなかにつくりあげる。そのなかから、よい医療をしようという意識や執着は生まれてくるのだと思います。
 
▽業務改革に対する意欲
 前述したことのなかから必然的に生まれてくる要素です。意識や執着が強ければ強いほど、業務改革に対する意欲も大きなものとなるでしょう。
 
▽ダメだと思うスタッフを支える厳しさと優しさ
そして、最後にダメだと思うスタッフを支える厳しさと、優しさです。厳しさは、そうしたスタッフを放置せず、彼らが力をつけることができるよう評価を行い、教育の場を提供し、そして学習できるように仕向けていくことです。
 
 これには有無を言わせない。徹底的に厳しい仕組みをつくる必要があります。組織で一般的にみられる傾向として、評価を行い教育の機会を提供し、現場で仕事をさせてできなければ低い評価。そして知らず知らずにできない者はオミットされ、放置される、ということがあります。しかし、医療においては、組織に所属しているかぎり、力を発揮してもらわなければならない要請があります。
 
 限られた経営資源で多くの成果をあげ、社会資源としての機能を果たさなければならないからです。厳しくできる仕組みやリーダーの存在が必要です。優しさは慈しみ。もともとの医療の思いは、職員に対しても発揮されなければなりません。組織の思いやり、気遣いの文化風土が患者さんへの一つ一つの対応に昇華されます。相手の立場を思いやる事情を慮(おもんばか)る必要があります。
 
 患者さんにはそうして対応するが、職員にはそうではいということは、少し言い過ぎかもしれませんが、欺瞞だと感じます。忙しさにかまけてそうなることはよく理解できますが、そうではない状況をどうつくりあげていくのか、努力が必要な領域であると考えています。
 
 まとめとして、再度記事に書いたことを思い出して、結論とします。
 
「このようなリーダーや組織があれば、職員がやる気になり、ルールや詳細な仕組みは、自然にできてくるし、また人も育ちます。新しい仕事や環境変化にも柔軟に取り組んでいくことができます。さらに、皆が常に合目的に動くことができるようになります。
 
 ここで書いているリーダーがいたり、病院があるかないかといえば、それは、0100ではなく、どの病院も、よいところを持っているものだし、医師のなかにも、上記を地でいく医師も数多くいます。看護師もコメディカルも事務のリーダーも同様です。
 要は、こうした形をリーダーか志向しているか、あるべき組織をつくろうとしているかどうかが、スタッフのやる気に大きく影響する、ということです。
 そのことを理解し、そこに少しでも近づくよう努力することが大切なのだと思います」。