よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

マニュアルに戻ろう

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最近、忘れがちになっていることで、どうしてもお伝えしなければならないことがあります。

 

マニュアルについてです。マニュアルを組織運営の柱に据えることが必要です。マニュアルというと、硬直的なイメージ、例えば「マニュアル通りにしか仕事ができない社員」をつくってしまうといったことが頭に浮かぶと思います。


しかし、仕事を定型的な領域と創造的な領域に分けたとき、まずは定型的なところを完全に行い、残りを常に考えて実行することのほうが生産性が高いことに気づきます。


単純作業であればもちろんのこと、複雑な作業でも標準化することでミスもなくなり時間をかけずに仕事を完了できます。稀にその場で考え判断することがあったとしても、それ以外の部分をできるだけ正確かつ迅速に実施することが大切であることが分かります。


マニュアルは、手順、留意点、必要な知識、接遇の項目から構成されています。構造化されたマニュアルといっています。ここでのマニュアルはノウハウ(上手いやり方、コツ)書です。ナレッジマネジメントの基本であるといわれています。


 1.マニュアルを作成するプロセス
 業務の棚卸、業務手順の検討、ノウハウの整理、また必要な知識の検討、本来の接遇を記載します。

 

場合によれば職場でもっとも優れた仕事をする社員のノウハウをマニュアル化することもあります。その瞬間においては、組織でもっともうまいやり方、コツが標準化されます。


 2.マニュアルが運用されるプロセス
 マニュアルに記載された事項が多くの社員により実行され、高い質による組織運営を行うことができます。

 

ただ、業務は動態的であり、常に新しいことが業務に追加されるとともに、従来の業務においても過去わからなかった課題が発見されたり、もっと良い方法を考える社員もでてきます。業務改善により新しいノウハウが生み出され、マニュアルが書き換えられます。


 新しいマニュアルが作成され、そのマニュアルを他の社員が学習し、新たに追加されたノウハウが組織に定着します。そしてまた他の誰かが新しい工夫を行い、といった具合にマニュアルを媒体として、次々に業務が質の高いものに置き換わっていくのです。


上記を整理すれば、以下がマニュアルの効用であるといえます。

  1. 目に見えないノウハウをマニュアル化すること(暗黙知の形式知化)
  2. また優れた個人のノウハウを組織のノウハウとすること(個人知の組織知化)
  3. マニュアルを運用することで、マニュアルに記載されたナレッジを広く教育し、業務の質を高め、生産性を向上することができる(組織知の個人知化)


 厳しい事業環境を迎え、質の高い、価値のある組織を作り上げる必要があります。マニュアルはそのための重要なツールであるといえます。


 なお、マニュアルは創造性を奪うと勘違いしている人たちがいますが、基礎がない人に創造はできません。基礎を学習し、ルーチンを理解してはじめてクリエイティビティを確保できることを忘れてはなりません。今の業務を完璧に。そして新しい工夫を行う、というながれづくりが必要です。

 

但し、マニュアルは万能ではありません。

  1. 暗黙知と暗黙知のやりとりの中から新しい価値を常に生み出すことや、
  2. 組織の誰が何を知っているか(Who knows What)を皆が知り、何かを最も得意とする人(スペシャリスト)から教えてもらう仕組み

についても忘れないことが大事です。

 

業務を出来るだけ標準化するものの、それだけでは十分ではないので上記二つを行う場づくりを怠らず、組織のナレッジを常に高める取り組みを行う必要があります。

 

業務を標準化し生産性を挙げるが、それらは常に網羅的ではないので、不足する領域での議論を行うこと、さらに仕事に長けた人から新しい情報を得て、学ぶことで、組織は成長し進化すると考えているのです。