よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

成長の道しるべとなる職務基準

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先日、病院で看護部長と職務基準についてミーティングしました。

職務基準とは、部署毎の職務分担一覧表で、

  • ひとくくりにした仕事とその内容を明らかにして、
  • 困難度や等級に応じて区分し、
  • 個人がどこまでそれらができればよいのかの組織の期待

を明らかにした規程です。平易にいえば、ある部署のある等級に属する人は、この仕事をこのレベルで実行して欲しい、という仕事の水準を表すものです。

 

よほどのことがない限り、個人差はあるものの実務で経験を積めば、仕事はできるようになります。それぞれの職種で上司が部下に教え、個人がどのように仕事をするか習得、それを現場が理解し次々に伝承していくことで仕事が進んでいくのです。

 

仕事は日進月歩であり日々さまざまのやり方が生まれ、さまざまな仕事がそこここで行われるようになります。あるときに誰かがつくった仕事は誰かに引き継がれ、進められます。

 

振り返ると、なぜこの仕事をしているのか、仕事の意味や目的が忘れられ、形式だけが継続されることもあります。職場には無秩序に仕事が溢れ、個人のスキルもまちまちのなかで、

  • 本来行われる仕事が行われなかったり
  • 必要ではない仕事が続いていたりするのです。
  • 結果として忙しいのにダブりがあったり、漏れがあり
  • 人も育たない
  • 仕事の成果があがらない
  • 無駄がある
  • ミスが起る

といった不幸が生まれる、といったことが起こります。

 

職場には

  1. どのような仕事があり、
  2. 誰により
  3. どのレベルで

その仕事は行われなけれないのかを明らかにしておく必要があるのです。

 

結局は職場に職務基準がなければ、自分はどんな仕事をどの程度の能力で仕事をすればよいのかが曖昧になります。自分でも今の仕事を今のやり方で続けてよいのか、また目標とする質が分からないし、適切な仕事ができているのか客観的にも評価ができません。

 

自部署のひとくくりの仕事(課業)をすべて洗い出し、それらが必要なのか不必要なのか、どのレベルで成果を挙げればよいのかについて議論し、この仕事はどの等級、もしくは職位の者がどのレベルでやればよいのかを決めます。職務基準の出来上がりです。

 

部署間での業務の切り分けや連携もここで検討し、漏れなくダブりなく職務内容を明らかにした基準をつくります。廃止する仕事や追加する仕事も移管し合う仕事もありますが、自部署で行う仕事やその進め方の枠組みが明確になります。

 

ただ方法についてや手順、ノウハウまでは職務基準では取り扱わないために業務マニュアルを並行して作成すると、仕事の内容がよりリアリティのあるものになることはいうまでもありません。

 

決められたことが決められたように行われるよう仕組みを作ったうえで、職務基準やマニュアルを使い個人の評価や教育を行います。

 

病院がまずは仕事の一定の質を担保し、そのうえで仕事の質を向上させていくためには、病院の期待値としての仕事の標準、具体的な仕事の方法を提示することが適当です。

 

病院は職務基準やマニュアル、教育制度を通じて個人の技術技能の向上を図り、仕事の仕組みの見直しを行うなかで病院の質を高めブランド構築を行います。厚生労働省が提示した医療制度構造改革の方向は病院病床削減。機能分化と平均在院日数短縮がテーマです。これらは

  1. 戦略明確化による
  2. 医療の質向上
  3. 結果としてのブランディング
  4. 増患活動

なしには成し遂げられません。

 

職務基準、マニュアル、教育体系の整備、そして評価制度の整備が必要です。

職務基準はマニュアルとともに、守るべき仕事の質が定められた段階まで到達できるよう職員を誘導する病院の憲法として扱われる基準です。職務基準が仕事の「道しるべ」である所以です。

 

  1. 患者や地域を守るために自らが成長する
  2. 成長しつつある職員によりチームが機能する
  3. 病院が成果をあげる
  4. 地域貢献する
  5. 地域に残る病院となる

というながれを早期につくりあげるために職務基準を整備運用することが必要です。

 

なお、既にお分かりのように一般企業に於いても職務基準の作成は必須です。欧米では職務の目的や具体的内容、必要なスキル、権限などを明示した職務記述書(Job description)により採用社員の職務を決めています。入社後のミスマッチ回避や適切な人事評価のためには職務基準を基礎として作成した職務記述書を活用しているのです。

 

日本ではまだまだ組織や社員の仕事のスキルや期待に対する意識が薄く制度整備が一部を除き進んでいません。各組織のリーダーは職務管理のあり方を一度見直しをしなければなりませんね。

最強のスタッフマネジメント

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最近、コロナがひと段落したこともあり、講演会やウェビナーを含め、リアルにおいても医療機関の理事長や院長と話す機会が増えました。そこで、多くの診療所にスタッフマネジメントへのニーズがあることが分かりました。

 

会計事務所のクライアントである様々な業種の企業幹部からも、社員の扱いについて相談を受ける機会が多くありますが、とりわけ資格保持者が多く、失業のリスクが少ない医療従事者は売り手市場に身を置いているため、マネジメントが難しい傾向があります。

 

しかし一方で多くの医療従事者の心底には患者を救いたい地域貢献をしたいという思いがあり、一般企業の社員に比して医療機関のミッションとスタッフのベクトル(進む方向)が自然に合致しているケースが多いのも事実です。それは明確な受容できるトップマネジメントの方針さえあれば、行動の一体化ができる可能性が高いことを意味しています。

 

必要なことはスタッフ個々の思いを実現させる戦略明確化、そしてその実行であることが分かります。

 

スタッフをやる気にさせるためにはどうしたらよいか、という質問に対し私は以下の答えを用意しています。

 

まずは、

  1. どのような診療所や病院をつくりたいのか
  2. どのような医療を行いたいのか
  3. どのように医療介護に関与するのか
  4. 時間軸への執着のために事業計画は立案したか
  5. どのように集患するのか
  6. どのようなマネジメントを行うのか
  7. どのような内外スタッフを用意するのか
  8. どのように運営していくのか

を院長が考えたうえで、

  1. どのような役割をもった内外スタッフを採用するのか
  2. どのような属性のスタッフを採用するのか
  3. 決めたことをどう実現するのか(統治方法の明確化)

にフォーカスし行動し、組織の運営方針を目標化し提示したうえでのOne on oneミーティングにより、

  1. 一人ひとりの属性や能力、思いを評価する
  2. 個々に明確な役割を付与する
  3. 達成に対する約束(Commitment=コミットメント)を行う
  4. 達成を支援する

ながれ(コミットメントサイクル)をつくります。

 

そもそも、スタッフは、ハーズバークの二要因理論にあるように、承認、責任、適正な評価、昇進、達成感(以上:動機付け要因)によりやる気になり、給与、福利厚生、同僚や上司との人間関係(以上:衛生要因)は悪いと不満になるけれども良くてもそれほどのやる気につながらない、という傾向にあります。

 

スタッフの人心掌握を行い、やる気になって院長と一緒に動いてもらうためには、彼らが率先垂範しリーダーシップを発揮するとともに、上記のながれを確立し適切な処遇を行うことが有効です。

 

そもそも人にとって達成感を得続けることが成功であり、その場を提供することが組織の役割であり責任です。

 

そのことを念頭に、

  • 組織適合できない人を見つけるための採用基準を設定する
  • 採用時に失敗しない
  • 上記コミットメントサイクルづくりを怠らない

ことがスタッフマネジメントをうまく行うことだと理解しなければなりません。

 

戦略や行動計画立案や目標設定、(人間力と技術力)評価・教育、コミットメントサイクルの適正化等々においた議論しなければならない詳細な課題は数多くありますが、まずは上記の枠組み(Framework=フレームワーク)を意識し行動することを怠れないのです。もちろん、診療所のみならず病院においても、一般企業においても同様のアプローチが重要であることはいうまでもありません。

 

事業の盛衰は、時代、環境、ドメイン、戦略、仕組み等により影響を受けますが最後はトップマネジメントを含む社員の質に大きく依存します。

 

傲慢かもしれませんが、事業を通じて人がどう生きるのかという命題に対する示唆を与えられるマネジメントを行なうことがリーダーの重要な仕事の一つであると私は考えています。

病院原価計算のすごい機能

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病院原価計算には部門別損益計算と、患者別疾病別原価計算があります。部門別損益計算から説明します。

 

部門別損益を計算できるようになると部門別あるいは病棟別、さらには診療科別の損益が計算でき、実際の損益分析をかなり詳しく行えるようになります。

 

部門は大きく直接部門、補助部門、間接部門に区分します。直接部門はプロフィットセンターで外来、病棟の各部門が、補助部門は直接部門をサポートする技術部門やオペ室等が、そしてコストセンターである事務の各部門が間接部門になります。

 

まずは日々の会計処理において外来各科、病棟、各診療科に部門コードを付し仕訳を行うことで一次集計を行います。一次集計は直接部門、補助部門、間接部門からなる部門別の損益の計算が行われ、この時点で各部門の損益の状況を把握します。

 

プロフィットセンターでどれだけ利益がでているのか、コストセンターの赤字はどの程度かを把握します。そののち階梯式配賦法を使い、患者数、職員数、面積、オーダー数、麻酔種別件数、オペ件数等々30種類以上の配賦基準による配賦計算を行います。

 

二次集計は、間接部門のコストの直接部門と補助部門への配賦を行います。ここでは役務提供されている部門がコストセンターの赤字を負担し、結果黒字なのか赤字なのかを確認します。事務部門の業務なしに現場は動けないのは明確ですよね。

 

三次配賦は補助部門の直接部門への損益の配賦を行った結果、すなわち補助部門が該当する間接部門のコストを背負い、そのうえで補助部門の損益を直接部門が負担し最終的に黒字なのか赤字なのかを見る段階です。なお、混合病床の場合、特定月に通過した患者数で診療科別に損益を按分し、診療科別の損益を出します。なぜ、この外来は、そして病棟は利益がでているなか、でていないのか、また、この診療科に利益がでているのか、でていないのかを把握できます。

 

部門別損益計算においては、各部門の個々の費目をみて人件費のバランスや、材料費や消耗品の消費の内容が理解できますし、さらに薬剤や医療材料についても、配賦計算の正確性を担保したうえで、病院全体の損益計算書で事業内容を分析するよりもはるかに詳細に部門の課題を発見・分析できるようになります。

                              

我々は20以上の病院で部門別損益計算を行ってきましたが、結果としてかなり正確に損益の原因を把握できるようになることが分かります。原因が理解できれば対策も可能になり利益をコントロールすることができるようになります。

 

ところで患者一人の原価は、患者総数により大きく変化します。たとえば病院全体で百万円の固定費が発生したとしてそれを100人の患者数で除したとき、一人の固定費は1万円ですが、200人の患者数で除すと一人の固定費は5,000円になってしまいます。

 

当たり前ですが患者数が増加すればするほど一人当たりの固定費は下がるのです。そしてさらに同じ疾病が増加すればするほど、経験曲線があがりコストが下がり利益がでるといわれています。

 

これはとりもなおさず同じ治療を何回も繰り返していると熟練し、技術が身につき、スタッフも慣れてくるのでアクシデントやインシデントを発生させず、医療の、質が上がり結果として間違いやミスなく迅速に目標としたアウトカムを得られるため、場合によれば変動比率も低減し一人当たりの患者コストが下がるというながれです。

 

患者数を徐々に増やすことで医療の質を高め、高い生産性を誘導し、コストを引き下げすることができるようになります。

 

これは部門別損益計算を行わずとも想定できる事項ですが、部門別損益計算によりリアルにその事実や成果を把握できるという意味で部門別損益計算を行う価値がある、という理解ができます。

 

さて、さらに部門別損益計算を進めると、ここでは詳しく説明しませんが、患者に関する患者別疾病別分析を行えるようになります。

 

患者別疾病別原価計算の実施です。患者一人ひとりの損益を出すために、まず患者に対する治療行為をレセプトデータから把握し原価マスターに飛ばすことで患者毎の直接材料費、直接経費を集計します。

 

さらにタイムスタディにより把握した疾患別医療従事者別の標準直接時間と時間当たりの平均人件費を使い計算した直接労務費を患者毎に集めます。最後に部門別損益計算により各病棟や各診療科を通過した入院患者の治療間接費を把握し、全てを集計して患者の疾病別原価が計算されるというロジックです。

 

疾患別医療従事者別の実際時間をタイムスタディにより把握し、標準時間を決定するために同じ疾患の患者のデータを数多くとるところに苦労はありますが、患者別疾病別原価計算により、どのような医療行為を行うと早期に退院できて利益がでるのか、またどのような医療行為を行うと利益がでないのかや、疾患別の損益の適正ポートフォリオが把握できるようになります。限られた設備で最も自院の得意な治療の組み合わせを決定しパフォーマンスを最大化する試みです。

 

もちろん病院は患者を選ぶことはできませんので、○○の疾患しか診ませんということはできません。診療拒否はできないですよね。また、患者数を増やせは一人当たりの原価は逓減し、利益が逓増的にでることは分かっていても、患者が無尽蔵に増加するわけではありません。

 

ただ、○○の疾患の治療は得意ですという言い方はそのまま使うことができますし、ターゲットを絞った増患を行える体制を整備することはできます。病院として原価計算や会計を知らなくても、導入していなくても得意な治療を行い、同じ経営資源で患者を増やせる病院は利益を増やせる構造があることは当たり前です。しかしその事実を原価計算や会計が裏付けているという捉え方ができるし、計画の基礎ができるのは科学的だし有益です。

 

病院原価計算を実施することで

  1. 無駄なコストが発見される、さらには
  2. 経営資源をより有効に活用するためにはどうしたらよいのかといった点から課題を整理することができる

ようになり、そして原価計算があることで、

  1. 経営の質が向上し、
  2. 問題を発見・解決しやすくなる

という結論です。

 

部門別損益計算や疾病別減価計算を実施することにより、自院はいくらのコストで治療をしているのか、また疾患別に対する治療は、それぞれいくらであるのかについて知ることができ、課題もより詳細に把握できます。病院原価計算の優れたところですね。

 

上記は、病院原価計算に対するほんの一部の考え方です。管理会計に属する病院原価計算を理解し行動の規範とすることやKPIと併せて活動のモニタリングの道具として利用することが適当です。どのような業態の病院であっても、せめて部門別損益計算を会計制度のなかで実施し業務改革を行うことが適切です。これを専門的には「部門別損益計算を制度会計として行う」といいます。

 

月次決算やKPIの設定による指標管理、投資経済計算など、自社のマネジメントに活かすために作成する病院内向けの会計管理会計があり、それが集約されて財務会計になるという考え方です。

 

気付いたときに病院全体の決算書から一定の配賦基準を利用して、一気に各部門の損益を計算するといった大まかなやり方は雑駁すぎで課題を発見できません。

 

少なくとも病院原価計算のうち毎月自動的に部門別損益計算ができる体制をつくりあげ、医療の質を高めつつ多くの患者の来院を促し、厳しい時代を乗り越えることが求められています。

 

どの業種においも同様ですが、業務をできるだけ可視化し、課題解決に効果的に対処することで、成果をより高めていく時が来たと考えています。

 

明確な権限で戦略推進を

             

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多くの組織で、権限と責任がうまく整理できていません。

 

厳しい外部環境となるなかで、各組織は足元を固めなければなりません。個々の職員が力を発揮することができる内部環境づくりを行う必要があるのです。権限と責任の明確化は、それらに一定の方向性を付与する基準になります。

 

権限と責任を明らかにする規程を職務権限規程といいます。職務権限規程は、職務権限規とは、組織において各職位の職務権限を明確にした規程です。職務権限規程を定めることによって、職位や部署相互の職務の分業と責任範囲を明確にして、命令系統のトラブルや職務間の重複や不足が発生することを抑止します。

 

以下職務権限規程の作成プロセスを説明します。

 

  1. 職務の明確化
  2. 権限と責任の所在調査
  3. それぞれの内容調査
  4. 過不足についての検討
  5. 各部署及び現場での話し合い
  6. 職務権限規程の作成及び修正

権限には、起案、審査、承認、(実施)、報告という項目があります。これらがあるべきかたちで行使されることにより適切な業務を行うことができます。どのような職務があり、付帯する権限にはどのようなものがあるのか、どのように責任を以て行使されているのかについての検証が行われます。

 

起案者も、その起案が適切かどうかを審査するものも大いに責任があります。ここで承認以降の権限が行使されるための前提や条件が検証されていないと承認以降の権限行使に瑕疵が生まれます。承認責任ももちろん重要ですし、承認事項が適切に実行されたことの報告を受ける責任も大事です。権限行使は責任を伴うので権限を明確にすることは責任の所在や範囲を明らかにすることと同義なんですね。

 

ということで誰が業務を洗い出しどのようなヒヤリングにより調査を進めていくのか、どのように整理していくのかなどについて検討します。

 

一旦あがってきた内容について、全体を俯瞰できる者、実務を理解できる者が実地調査を行い、実際に各権限が行使されるとき「あるべきもの」になっているのかどうかについての検証を行います。そうなっている筈だけれども実際にはそうなっていない、ということもあり、整理を行う者の認識と実際のギャップを埋めます。

 

すなわちここに本来あるべき権限が行使されていない、ということや本来持つべきではない権限が行使されていないということがあるのかどうかについての議論をする必要があります。実際の権限と実際との間の過不足を埋めていくのです。

 

組織として、権限の行使はどうあるべきであるのかを確定したうえで、現場でのあり方を決定していくことになります。幹部と現場の間でどうあるべきであるのかについて議論し、最終決定することになります。

 

最終決定した内容を権限規程として整理します。これらを交付してそのように動いてもらうとともに、齟齬があれば(食い違いがあれば)これを修正します。

 

以上、かなり大雑把に書きましたが、結果としてどの部署やどの職位の誰が権限をもち、誰が権限をもっていないのかについて明確にし、その通りに運営できるようにしておく必要があります。そうではなければ、

  • あるときには権限を行使し、あるときには行使しない
  • 誰も行使しない
  • 皆で行使する

といった混乱が起こります。

 

権限の所在が明らかでなければ責任も不明瞭となり、物事がうまく進みません。円滑に業務を推進するためにも、この業務は誰が責任をもつのか、権限をもつのかについて明確な決定が行われる必要があります。もちろん組織成長や事業再編により業務の進め方も変化するため、都度職務権限規程は改訂されることはいうまでもありません。

 

組織構成員が規律ある行動をとるため、また無駄のない業務のために職務権限規程作成、運用を行い、戦略の的確な実行を担保できるよう組織運営を行うことが得策です。職務権限規程、結構重要ですね。

    

カンボジア・プノンペンの病院視察

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我々が、中国(北京、上海)、韓国、香港など東アジア、そしてオーストラリアでの視察を経て、ASEAN10ヶ国の病院や介護施設を調査してきたのはいつもお話ししています。なかでも気になる国カンボジア。
 
カンボジアではやっと2018年に健康保険が機能し始め、いまでは公的病院もしくはNSSF(National Social Security Fund=国家社会保障基金)登録の病院・診療所を受診すると、診察費用等が健康保険によって賄われるようになったようです。
 
他の国々も含め、今まで未成熟だった医療が整備され徐々に国民の効用が高まる勢いのあるASEAN各国ですが、日本も未来をどのように切り開いていくのか懸命な議論が必要ですね。

 

以下は2016年にカンボジアの病院視察に行ったときの記事です。

 
「カンボジア、プノンペンの韓国系の病院に飛び込みで入り、話を聞かせてほしい、見学をといったら、マネージャーがでてきて見事に断られました。
 
ということで、それでは、看護師さん(責任者)写真撮らせて下さい的な話になり、撮らせてもらった写真がこれです。ポーズとるところからは慣れている感じがしますが。
 
カルテからみて、かなりの患者が来院していることが分かります。もちろん、中堅病院なので小ぶりで、たぶんカンボジアの医師が診察をしているのだと思います。

 

ポルポト政権のときに、知識人はすべて抹殺されているので、難を逃れた医師が診察をしているのか、その後に医師になった医師が診察しているのかわかりません。韓国人医師が診察しているのかどうかについても聞きませんでした。

 
日本のODAで建設したプノンペンの産婦人科病院は訪問しましたが、韓国はこのほかにも眼科や小児科など様々な病院を寄贈しています。中国は更に多くの病院や救急車を提供しています。日本は出遅れ感がありますね。
 
ということで、詳しい話を聞く事はできませんでした。この日の病院視察はここだけで終わり。
 

ところで、社会保険制度はあるもののうまく機能しておらず、カンボジアでは診療費が公的機関も含め、医療機関 によって診療費が異なると聞きました。診療費の差は医療の質の格差にも繋がるとのことです。

 

患者もお金がないと、医療サービスを受けられないため、薬局等で薬を買い治療をするとのこと。公的医療を廉価で受けられる香港ですら国民は健康維持のために日々努力していましたが、カンボジアはさらに日頃の健康管理が必要なのではないかと思いました。

 

日本のようにどこに行ってもどの医療機関でもフリーアクセスで医療を享受できる国民はある意味幸せと感じます。もちろんそのツケが社会保障費増に繋がり、ブーメランのように国民に帰ってきている現状を思い何とも言えぬ気持ちになりました。

 

なお、日本の北原先生がプノンペンにサンライズホスピタルを開業しました(2016年10月)が、医師免許をそのまま使えるため、多くの日本人医師によるクリニックが開業しており、現地で働く日本人にはとても便利なことも付記しておきます。

 

カンボジア。これからの国ですが中心部のすざましい開発が進み、プノンペンはまるで東京。ビル建設ラッシュです。活気がありました。また機会をつくり行きたいと思います。」
 
 

スムースな組織運営を行う方法

  

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以前、病院で中間管理職勉強会をしました。

 

勉強会では、部署間、部署内コンフリクト(衝突)をどう解決するのかについて簡単に説明しました。もともと組織にはセクショナリズムや、自己利益優先という性格があります。これらを更に助長する事案の検討でした。

 

いくつかのポイントのなかから、もっとも理解して欲しかったことについてご紹介します。

 

「嫌いな人だとどこかで仕事が疎かになる。好きな人だと仕事は楽しいという思いを持つ人もいると思います。しかし、仕事は個人的な感情で行うものではありません。言うまでもなく好き嫌いに関わらず組織がミッションを果たせるかが行動の拠り所になるからです。

 

とはいうもの人の性として、何処かでそうした思いを払拭できないかもしれません。なので全ての職員は仕事で他人から好かれるよう力をつける。仕事の姿勢や態度、他から求められる人にならなければなりません。組織目標を達成するため、どうすれば、それができるかを考えましょう」と説明しました。

 

また「私がこの部署や部下を守るというリーダーの気持ちは大切ですが、組織は全体として機能しなければなりません。各部署の責任者も他部署との円滑な連携を意識した采配をとる必要があります。

 

極端ですが、自分の部署が良ければ(他部署はどうでも)いい、という気持ちに対しては、そもそも社会人としてどうか。他者の立場に立って物事を考えられる自分づくりを」と訴えました。

 

「他部署の誰々さんは仕事ができないから迷惑、と思ったことがある場合、なぜできないのか。ルールはあるか教育されているか、組織の配置はどうか、仕事量はどうか、自分達はそのために何をしなければならないのかと考えてみてはどうでしょうか。

 

自部署にも同様の課題があるかもしれないからです。全部署の責任者はそう考え、他部署が仕事に支障がないよう協力して仕組みの見直しや教育を体系的に行いましょう」

 

また、「なんで言ったことができないのかしら、と思う前に、言い方、説明の仕方、示し方、教え方、確認の仕方、自分達でできる仕事を他部署に押し付けていないか、自分達の仕事がうまくできていないのではないか等、自分(達)に問題はないかを考えるようにして欲しい」と話しました。

 

「皆が盛り上がって、楽しく、そして自分の成長を感じながら仕事ができる組織をつくらなければなりません。

 

まずは、さまざまな目標があるが、結果として適正利益を出すこと。適正利益は患者から評価されたことの証拠。

 

よい仕事を行えば必ず評価されるし、利益もでる。病院も安定的に医療を進めていくことができる。処遇の改善もできる。利益を求めるのではなくブランドを確立することが大事。結果として適正利益は確保できる。

 

病院を地域にとって永遠の存在にしていく必要がある、こうした目的を共有する組織であれば部署間、あるいは部署内のコンフリクトは生まれる筈はない」、という整理をしました。

  

  1. 厳しい環境において、地域により高い貢献をすることが自分の使命
  2. 今までにない質の高い仕事をすることで、必ず、すべては自分に戻る
  3. 悔いのない人生のために、病院での仕事を通して成長する
  4. 仕事はまずは組織人としての自分のためにするもの。自分の成長がなければ患者や利用者のためにも、組織のためにもならない。自己変革を前提として組織一丸となり成果をあげていこう

と、まとめています。

 

なお、現場でどうしても解決できない部署間コンフリクトや部署内コンフリクトはトップの介入による解決が必要になります。皆の力が一つになって、組織、そして日本の未来をつくります。頑張りましょう」

 

部署間、部署内コンフリクトはどのような業種においても同じように起こりうる課題。コンフリクトの解決を行うことで組織運営が円滑に進み生産性が劇的に向上することを知る必要があります。まずはコンフリクトの把握から始めると良いでしょう。

軽んじてはいけないマニュアルの効用

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先日、セミナーを行いました。マニュアルがいかに大切であるのかについての説明を行いましたが、マニュアルに関するチェックシートがあることを思いだしました。

 

チェックシートを使い、マニュアルの作成及び運営の状況について自社の現状を調査してみる必要があります。

1マニュアル委員会など業務を常にウォッチする組織はありますか
2それらは、目的をもって運営されていますか
3マニュアルが必要であることについて全社のコンセンサスはありますか
4マニュアルは、(暗黙知→形式知、個人知→組織知を示す)ナレッジマネジメントのツールであることを理解していますか
5マニュアルを利用して仕事をするという教育が行われていますか
6マニュアルを利用して仕事をすることが文化となっていますか
7現在マニュアルの整備率はどの程度ですか
8各部署のマニュアル件数を把握していますか
9それは何件ですか
10マニュアルの対象となる項目がすべて一覧表になっていますか
11いつまでにどのマニュアルを作成するといったことについて計画がありますか
12計画が円滑に達成できるよう定期的な評価が行われていますか
13マニュアルのフォームは統一されていますか
14複数部署をまたがる業務のマニュアルは、複数部署が協力して作成しているか
15各部署のマニュアル関連する業務について首尾一貫性をもって作成されていますか
16マニュアルを作成するものの権限は明確ですか
17マニュアルは一定の承認をうけてから現場で利用されていますか

18マニュアル改訂の履歴は管理していますか
19改訂されたマニュアルは直ちに開示されるようになっていますか
20マニュアルは手順、留意点、必要な知識能力、そして接遇欄に区分されていますか
21それらは、横に並べられて作成されていますか
22手順は簡潔に作成されていますか
23留意点は、手順を補足するかたちで、すべての手順について書かれていますか
24留意点には、うまいやり方・コツ(ノウハウ)といったものが書かれていますか
25留意点には、疑似体験ができるように失敗したことについても記述がありますか
26留意点には、インシデントが起こったことについて特に記述がありますか
27留意点には、アクシデントが起こったことについて特に記述がありますか
28必要な知識・能力には、関連する知識を記載していますか
29必要な知識・能力には、関連する能力を記載していますか
30必要な知識・能力には、関連するマニュアルNOが記載されていますか
31接遇欄には本来の接遇が記載されていますか

32マニュアルの改訂が頻繁に実施されていますか
33マニュアルの改訂のための改善提案制度など整備されていますか

34マニュアルから職務基準を作成していますか
35個人のスキルをマニュアルや職務基準によって評価していますか
36職務基準はすべてマニュアルにより説明できるようになっていますか
37職場内教育はマニュアルや職務基準によって行われていますか
38職務基準は時代の変遷や環境変化に対応した戦略により常に改訂されていますか

これらをチェックして、不足するところがあれば修正していくことが求められています。

 

マニュアルの作成・運用により、暗黙知→形式知、個人知→組織知への転換が行われ、多くの成果を得られます。各部署の業務が可視化され相互理解のもと部署間の連携やコミュニケーションも活性化します。業務改善による教育による生産性向上が得られます。業務フローや職務基準にも影響を与え仕事の仕組み見直しや個人の技術技能向上への基礎にもなります。

 

マニュアルは本当に奥が深いですね。

 

なお、DX(デジタルトランスフォーメーシ)への取り組みを行うときには業務の現状分析は不可欠です。マニュアル作成、運用プロセスにおいて業務の適切な見直しが行われていればIT化やAI化は円滑に進みます。マニュアルの適切な活用が行われなければなりません。