よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

教育システムについて(3)

それは、結局病院の医療の質を高め、担保し、地域住民や患者さんから評価され、尊敬されるなかで、期待される医療を提供することによって、成果をあげることにつながります。

仮説→検証→仮説→検証活動を行うためには、組織としての教育制度をもつことが必要であり、そのことでしか医療の質を計画的に高めていくことができないということを病院幹部は明確に理解する必要があります。


3.教育制度体系
教育制度は、3つから成り立つことは説明しています。
①職場内教育
②集合教育
自己啓発
がそれらです。

(1)職場内教育  
文字通り職場内で実践する教育です。
従来は明確な基準がなかったなかで、上司の属性によって教育が行われていました。
したがって上司の属性に応じた教育成果を部下は享受していました。

組織は職場で主としてどのような基準によって、どのような教育が、いつ、どのように行われているのかを把握していない、という状況で自助的に教育が職場のニーズに応じて行われてきたことになります。

今後は職場というよりは、職場を含んだ病院として、
①どのような人材を
②いつまでに
③何人
育成していくのか、また、少なくとも自院の職員は
④職位又は等級別にこのような知識をもっている
⑤このような経験をもっている
ということを企図した育成を行うことが適当です。
   

人材育成計画を立案し、人材を確保するためには、
①職員全員は期待する知識や経験をもっているのかどうかの検証
②目標設定
③ギャップの認識
④教育
⑤成果獲得
といったなかで教育を継続していくことが必要です。
   
道具として
①職務基準(今後作成)
②マニュアル
を利用します。


(2)集合教育
集合教育は、ただ漫然と参加するのではなく、参加者個人のニーズに合わせてこれを行うことが原則です。勿論、新たなテーマをある者に学習させるということがあったとしても、原則としてそれはその者に対する教育目的に基づいて参加機会を提供することが必要です。
   
個人個人の教育課題やテーマを常に明確にしたうえで無駄のない教育を行っていく
仕組みをつくりあげることが求められています。

基本的にはしたがって職場内教育にて発見された課題を職場内で教育するとともに、
それを補完するために集合教育がある、という考え方を採用するとともに、前述したように参加指示には目的が必要であり、目的のない集合教育参加は戒められなければなりません。

なお、集合教育は
①内部
②外部
のものがあります。
基本的には集合教育は内部で実施されることが適当です。
①組織として職員に何を学習して欲しいのかを明確にする
②当該テーマに対して必要な講師を確保する
③それらを学習してもらう
④成果を得て仕事に役立たせる
というながれが必要です。

教育委員会といったものや事務部が企画を立案し、企画に基づいた教育を実施することが求める人材育成を行うことを容易にします。

なお、次善の策として、
①各部門から集合教育の年間計画(職場の意思に基づくカリキュラム)を提出してもらう
②①をマトリックスとして月次で集計を行い一覧表を作成する
③②を開示し、各部門相互に参加を促す
④上司は必要に応じて部下に参加を指示する
⑤成果を継続的に把握する
といった活動が行われる必要があります。


(3)自己啓発
自己啓発は、自分で人知れず学習することも大きな概念では含んでいますが、厳密には自分で自らの意思で知識や経験を習得する自己学習とは明確に峻別される必要があると解釈しています。
    
制度として病院が自己啓発を行う場合には、上司からテーマや方法についての指示を受け、これを根拠に自分で学習を行うとともにその成果を評価の対象としていくことが通常であり、上司の指示に基づきといったところにおいて自己学習と区別されます。

あくまでも組織として必要な人材育成を行う場面で職場内教育が行われ、それを補完するために集合教育があり、さらに部下の時間を活用した自己啓発によって最終的な知識を習得する、といったながれをつくることになります。自己啓発は教育フローの最終場面であるということができます(続く)。

「ドクタートレジャーボックス記載記事」