よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

患者さんからみた病院と病院からみた患者さん(6)本来の接遇って

病院で接遇教育が行なわれることがあります。
あまりにも言葉遣いがゾンザイであったり、態度が社会常識から外れているといったことが理事長の悩みです。

でも患者さんは職員の挨拶、笑顔、礼節が正しければそれで納得するんですか?
そうではないですよね。

病院に遊びにきているのではありません。治療に来ているのです。
不安と、心配と、安心したいという思いと、大丈夫だという思いと…。葛藤と悩みのなかで治療を受けにくるのです。

そのときに病院が、私達はサービス業です。患者さんを、患者さまと呼びましょう。そして、次に笑顔で患者さまを迎えましょう。笑顔の作り方は、まず口の端を引き上げるように意識し…、って違いますよね。

患者さんをお客さんとして捉える前に、私達は患者さんを治療する、病気から救う援助をする、支援をするんだという決意をしていただくことによって、自然に、大丈夫ですか、私達と一緒に治しましょうね。
ゆっくり歩いていいんですよ。

ゆっくりゆっくり…といったいたわりの気持ちや、使命感による人としての優しさを患者さんに提供することができると思います。

医療はサービス業であるとともに、それ以前に、医療従事者の気持ちは、仕事を超えた人の善意や良心によって成立っている慈悲としての心の発露である必要があります。

病院は、人の人としてもっている本当の優しさや深さをどのように引き出していくのか、そうした組織運営をしていくべきではないでしょうか。

トップマネジメントは、接遇研修の講師を招聘することも、それはそれでよいと思います。

しかし患者さんに対し、私達は医療従事者として、人として患者さんのために尽くそう、患者さんと一緒に考え、治療の最適解をだせるよう精進しよう。

勉強しよう、研究しよう、現場から学び人として成長しよう、心から、患者さんをいつくしみ、自分として最大の努力をするなかで医療従事者として生きていこう、と話て欲しい。

そして、医師やスタッフのために、あるべき病院経営をする。そのためのスキル、そのためのスタッフ採用、あるいはそのためのコンサルティングを受け、医師やスタッフが、彼らの力を発揮しつくせる環境をつくりあげて欲しい。


人事制度、目標管理制度、マニュアル、パス、リスクマネジメント、地域連携、ディスチャージ、管理会計、KPI、患者別疾病別原価計算等々…。それらはすべて医師やスタッフが、患者さんのためによい治療ができる、患者さん自らが治療に立ち向かうための支援ができる、ためにあるということを理解、受容して欲しい。

病院にとっての経営はそういうものであると信じて経営コンサルティングをしてきたつもりです。病院にとっての患者さんに対する接遇は、医師やスタッフによる本来の医療をあるべきかたちで提供することそのものであり、決して笑顔、挨拶、礼節を直接求めるものではない。

笑顔、挨拶、礼節は、医師やスタッフの「使命感に裏付けられた慈悲心とプライドによる医療」の提供の結果であると考えています。

医療機関における本来の接遇は、痛みをできるだけ感じさせない、羞恥心をできるだけ感じさせない、恐怖心をできるだけ感じさせない、不利益をあたえない、不便を感じさせない、できるだけ納得してもらう…等々、具体的なかたちで患者さんに提供される医療そのものであると考えているのです。

理事長、院長などトップマネジメントの思いやリーダーシップは、医師やスタッフの行動を通じ、病院の思想を患者さまや地域に伝わります。患者さんは機敏にそれらを感じとり、医療を受け入れ、自らの治癒力を以って医師やスタッフと闘う姿勢をもつことができます。

病院にとっての患者さん、そして患者さんにとっての病院の思いが一体となる瞬間であると考えます。


(DTB同時掲載)