よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

びっくりリスクマネジメント

 クライアントのY病院のリスクマネジメントの委員長である医師は、こう説明しました。アクシデントひとつひとつに対策を立てていたらとんでもなく時間がかかる。だから大きなものや統計的に重要なものだけに対策をたてる。って本当にびっくりします。

 そもそもインシデントについては、そうした考えが成り立つかもしれません。しかし、アクシデントです。ありえないです。レベル1であっても実施したアクシデントには対策が必要であるというのが私達の主張です(国はレベル2からを事故として集計していますが)。ハインリッヒの法則をもちだすまでもなく、やっぱりできるだけ事故をなくす対応をしなければなりません。それでもスリップがあるのです。

 しかし、日ごろから仕組みづくりや意識の徹底、そして技術の向上に取り組んでいれば必ず事故は低減しないわけがありません。ある子供服の工場で、従業員にアンケートをとったとき(私が銀行員のときですから今から10年以上前のことではありますが)、たった一人、当社は不良品を出荷している、というものが書かれていました。会社をあげて品質管理を徹底したことはいうまでもありません。

 たくさんの事故(患者さんにとっては自分のなかの唯一の事故です)のなかの(患者は事故と認識していないものもたくさんあります)、それもレベル1(実施したが影響なし)であてってこれが次に取り返しの付かない事故に展開することがあるのです。ひとつひとつチェックして、重要でない、あるいは仕組みでは解決できないほど個人的である。仕組みで解決できるがとてつもなくコストがかかる、といった特殊な事情があるものは、牽制機能を強化するための手順程度をもって対策としてもよいでしょう(たとえば必ず第三者がチェックする)。しかし、通常は必ずそれを抑制する手順があるものです。

 対策としてルールを変える、方法を変える、仕組みを変えるということがあるはずです。そのことを弊社スタッフが医師に説明しました。しかし、医師の意思は不変でした。院長に説明しても、正しいことが定着するまで説得するのがコンサルの役割である、といわれる始末です。はっきり申し上げて一事が万事です。

 こうした考えをもっている病院は私達がいくら頑張っても、成果をあげることはできません。絶対です。残念ですが、今回の医療制度改革のなかでは淘汰される可能性が高いでしょう。皆さんの病院はいかがでしょう。


「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」