よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

クリティカルパスのすごさ(3)

 クリティカルパスは、DPC下において欠かさざるものであることは明白です。DPCAB期間とパスの日数の比較によりパス日数を短縮する道具になるからです。DPCに近づけるためには、パスがなければどこを改善してよいのかわかりません。まずは日数を合わせるためには何日を短縮しなければならないのかを疾病別に一覧表とします。
 
 そのうえで、
 ①外来パス化による短縮
 ②地域連携パス化による短縮
 ③前回説明したバリアンスマネジメントやアウトカムマネジメントによる短縮
が行われることになります。

 外来パス化による短縮ですが、術前の検査をすべて外来化するということで対応します。疾病別に検査のセットを作成することになります。ここでいう検査には撮影も含まれています。術前何日前のデータを手術に利用できるのかについて検討します。ほぼ1週間がマックスとなるでしょう。それ以上の乖離は検査データが陳腐化してしまうことになるからです。

 検査セットの内容については、現状精査が必要です。必要な検査とそうではない検査を峻別し、明確な基準をつくることが必要です。術前検査の外来パス化は、予定入院の場合であり、緊急入院の場合には適用されません。

 紹介の場合にはどのように対処するのか、遠方から来院している患者にはどのように対処するのか、といった課題があります。また、どうしても入院して検査をしなければならい場合には、一端入院して検査を受けたのち、翌日退院してもらい、再度手術のために入院するということが可能であるのかどうか等々、さまざまなケースがあるため議論が必要です。

 地域連携パスについてですが、自院の退院許可を出すアウトカムの定量化が必要です。それができたのち、自院のポジションとしてここまでの治療を完了したのち、連携パス付きで退院支援を行なうことになります。連携パスは転送先の病院や診療所によるケアを効果的に実施するために役立ちます。パスがあることにより、転送先病院や在宅でのケアが円滑に進むことになるでしょう。

 アウトカムマネジメントのなかでのCIによる定量化作業が進むことにより、主観ではなく客観的なかたちでの退院が実施できることになります。パスがあることで患者も納得して当院での治療が完了したことを悟らざるを得ない、といった状況となります。

 また地域連携パスがあることで、病院が患者と一体となって治療に立ち向かっていることが理解されることでしょう。パスがあるのとないのとでは大きく成果が異なることになります。
 ということで病棟に残った部分のパスは、前回説明したようにバリアンスマネジメントを行うなかで、業務改革ができたり結果として在院日数を短縮することができたりします。

 総じてパスは在院日数短縮という名目のなかで、創造的に改訂され、そのプロセスでは多くの事項の改善が実施されることになる。ということがその内容です。外来パス化は短時間で必要な検査をおこなうことにつながり、入院して検査を受けることよりも効果的に検査を実施することができる筈です。これは社会資源を有効に利用することになります。その間は治療をしなければならない患者のためにベッドを空けることもできるからです。
 
 連携パスは地域に医療が標準化されるきっかけを提供します。院内のみならず他院にもそして診療所においてもまずは医療が外形的に、標準化されることになります。実質的にどうかというと、それは別途病院が提供したマニュアルやチェックシート、関連図やその他資料など、現場の医療を質を向上させるための仕掛けが別途必要です。地域のためのカンファレンスやケースマネジメントが行われることになります。
 このようにクリティカルパスがあることにより、DPC下において在院日数短縮という道標により、迷える旅人が明確な変革の意志をもった治療を行うことができるよう誘導されることになります(ここで変革の意志をもった医療、とは現状の医療を否定するものではなく、現状の医療のみ直しをかけるなかでより質的に向上させながら必要十分な医療を模索するプロセスへ入る意志を意味している定義です⇒従来は自院の治療をパス化してパス通りに医療を行う誘因しか与えなかったパスが、DPCと比較されることによりより明確な治療方法の改定を誘導する道具となるのです)。

 外来パス化、地域連携パス化、そして自院の業務改革を進展させることのなかで、クリティカルパスはスタッフや医師の考え方や意志、行動そのものを変革していく力をもつことになります。

 上記がクリティカルパスがすごいことの第三弾です。さらに四位一体の理論にはまだまだすごいことが隠されています。これは次回第四弾で説明します(続く)。


「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」