よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

3.5倍返し

 この数字はなんだかわかりますか?DPC病院となれるかどうかの数字です。すなわち平均的な一般病床数×4÷総ベッド数が3.5以上ないとDPCの申請はできない(データ採用数/全病床)といったことにしようというのが厚労省の考えです。

 1400もDPCの準備病院と適用病院が増加したなか、ケアミックスの病院はDPC論議から退場してね、というのが本音です。急性期であってもケアミックスであるところはたくさんあり、とりわけ専門病院で回復期や亜急性期をもっているところはたくさんあります。

 こんな本来DPCがもっとも適している病院が、この規定のためにDPCから排除されてしまうのです。DPCが本来の意味から外れ、病院を排除しよう、つぶしていこうという方向にいくのは問題があります。そもそもDPCは、単なる診療報酬請求方式ではなく、医療の質を向上させるためのきっかけづくりが存在目的であると考えています。

 在院日数AB期間に合わせるために、パスをつくり、バリアンスマネジメントを行い、そのためにアウトカムマネジメントを行い、原価計算にも利用する。もちろんバリアンスのなかには業務改革のポイントがぎっしりつまっているわけで、したがって、組織の質が向上しないはずはありません。

 あるべきマニュアルや職務基準による教育は、個人の力を引き上げますし、結果として自信そもったスタッフが患者さんのニーズに的確に応える。そんな姿が目に浮かびます。外圧があることで、病院は変われます。外圧がなければ組織は動かない。それは特殊なことではなく、組織の摂理です。DPCは機能評価よりも、ISOよりも、何よりも本来はDPCが本当に理解され、適用への挑戦が行われなければならないのです。

 3.5倍返しはそんな純粋な医療原点回帰のチャンスすら失わせる仕掛けです。数が多いから少なくする、といったことはナンセンスです。自動的、かつ自然にDPCに乗れなければ良い医療ができない。できなければ収入があがらない。あがらなければ淘汰される。といった本来の淘汰システムを利用することのほうがフェアです。

 門前払いは意味がわかりません。一日包括に問題があるのであれば直せばよい。DRGがよいのであればDRGを導入すればよい。しかし、目的を財政上のものだけに置くのであれば、日本のよい医療、すぐれた医療を瓦解させることになることは理解しなければならないといつも思っています。