よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

暗雲が立ち込める地域一般病床

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国際医療福祉大学の高橋泰教授によれば、平成28年には全包括となる、ということです。現在90万床ある一般病床のうち50万床がDPC病院ですが、残りの40万床は出来高病床です。

 しかし、この出来高病床は、ほとんどの先進国にはすでにないといわれています。大半がDRGといわれる制度の派生化された制度であり、手術や高額な検査以外は包括ですが、日本の40万床だけが出来高での診療報酬制度をもっています。

 中医協は軽度の急性期も包括に向けて検討するというながれで検討を進めてきています。日本のDPCはDRGとは前者が一日包括であり、後者が一入院包括であるところの差はありますが、この制度にすべての急性期の病床を転換しようという試みです。

 入院してから医師が直接関与するコストであるドクターフィー以外がすべて包括になるということは、街の小さな特徴のない一次医療や高齢者の社会的入院を行っている病院が注射や薬、検査では収益を一定以上をあげることができないということを意味しています。

 ある病院の事務長は、いろいろ理由をつけて入院患者にあらゆる検査を行い、可能なかぎりの投薬を行うという話をこっそり教えてくれました。

 他の破綻しかけている病院から、患者はいませんか、ながいかんじゃを引き受けますという電話があり、患者を廻していると肩をすくめながら話していました。他の破綻しかけている病院は、私たちが依然、ファンドの投資先として調査に入った病院で、日々の資金繰りに困っていた病院です。現金で薬を買わなければならない、そして事務長が毎日資金調達に走っているような病院でした。

 生き延びていることに驚きましたが、そもそもあるべきかたちで医療費が使われていないということにもっと驚愕します。こうして現場では中小病院が、医療依存度の低い患者を医療というなのもとで高コストで入院させ、生き延びていこうとしています。もう債務超過になっているこの病院の院長の報酬は3500万円です。社宅もいれえば4000万円です。

 院長は現状の経営状況に対し、なんらの手を打ってこなかった。こんなことがあちらこちらで起こっていて、すでにその病院の周辺の病院は2つ倒産しています。

 入院患者の3割は生活保護を受けている人であり、また外来患者も治療費を払えない人が続出していると、事務長は眉間に皺を寄せていましたが、日本の経済環境も益々悪化し、医療費を本当に支払えない医療が必要な地域住民も増え続けていくのだと、革新しました。

 松田先生が話されるように、社会医療を行う病院が少なく、急性期が多い、という歪な(いびつな)階層になっている病院業態が整理され、病院が業態別に再構築され、医療依存度が低い患者は病院以外の場所でケアされる制度がつくられる必要があります。医療費のGDP比が議論され、日本はまだまだ医療にお金をかけていないという話がありますが、そもそも医療費は歳入を超えています。
 
 医療費だけで歳入を超えているのです。

 このような国がいまの医療を存続させることができるはずがありません。それに加えて病院の院長が組織マネジメントを知らない。また事務長が専門家ではない。職員に人が育っていない中小病院がたくさんある。そしてそうした病院が出来高病床を持っている。

 全包括、すなわち非DPCの急性期病床がDPC化されれば、そうした病院はひとたまりもなく淘汰されるか、業態を回復期や亜急性期に変えるか、あるいは診療所と住宅に代えて活かさずを得ません。

 DPCはDPC病院が解ればよい、という考え方は明らかに間違いです。もっと非DPC病院のトップや医師、そして職員は、DPCの行方を理解するとともに、自院の身の振り方を考えていく必要があります。そのために、私たちホワイトボックス社は10月から経営企画室の代行業務を行います。

 病院の現状を明確に分析し、組織マネジメントを理解するとともにDPCを把握し、自院をどこまでどのようにもっていくのかについての徹底検討としてくことが求められています。

 平成28年はDPC病院の調整係数が廃止され終わる年と符合します。また、消費税の導入が現実味を帯びてくるときです。まさにDPCが求める機能をもてないDPC病院すら淘汰される可能性がある年になります。消費税が増税されることで、医療収益に転嫁できない医療法人や介護事業は恐ろしくコストアップになり、法人税減税があるものの、結局は利益を棄損し、キャッシュを失う時期でもあります。

 困難を乗り越え、きれいな業態別医療機関が整備され、在宅療養支援診療所を中心とした高専賃を始め在宅での医療が展開されるなか、新しい医療と介護がはじまります。
 医療そして介護がどのようにあればよいのか。私たちは明確な方向のなかで、多くのクライアントとともに具体的な活動を開始しています。