よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

退院支援計画(1)全体的な考え方

簡単に整理しましょう。
退院支援には2つの側面があります。
一つは、患者さんの立場に立った退院支援です。一つは病院の立場に立った退院支援です。

(1)患者さんの立場に立った退院支援
退院支援はまさに退院援助といった言葉が示すように、入院された患者さんの
 ①経済的な問題
 ②家族との間の事情
 ③患者さんがどうしたいのかといった本人の想い
といったものを尊重し、病院側から、患者さんや家族の方々が希望する状況をつくりだすという視点です。

この視点に従えば、退院という行為のみならず、病院に入院している間、退院を迎えるまでの間ずっと上記に関与していく必要があることが判ります。

経済的な問題解決を行い、家庭の事情(家族の思いや気持ちまで)を考慮した対応を行うことが入院中に行なわなければならないことです。
 ①入院期間における家族と患者さんの関係の維持(悪化しないようにする。改善は意図できない)
 ②入院費用の支払いの可能性
といったことについての十分な対応が必要です。

実際に入院したことで余計に関係が悪化するということや入院したものの入院費用の支払いができないといったことは病院内で頻発しています。

前者では、元気なときに父親から暴力を振るわれた、絶対に看病したくない、といったことや、元気なときに仲が悪く接点もなかったのに入院してから面倒見るなんてありえないという例があります。

後者では、父が入院し、兄がお金を借りて通帳に入金したら、それを弟が使いこんでしまい、結局医療費を入金せず退院、退院したのちも兄がさらに月々の収入から病院の未収入金を払い続けているということもありました。

先日も、もともとベットが空いていないということで、差額ベットを利用しなければならない状態となった患者さんが、その支払いを意図していなかったということでトラブルになるケースありました。

また稀に支払いを拒否して(ある病院は前日に忽然と姿を消したそうです)退院してしまうといったこともあり、未収入金発生の要因となる家族や患者さんの問題が内在しています。

患者さん用のパスに「あなたの疾患であればこの程度の治療費がかかります」と記載するとこも増えています。

一部病院からの未収入金を発生させないという事情はあるものの、患者さんの立場に立って共に悩み解決をしていくということができるよう取組みをしていくことになります。
 ①患者さん相談室を設け、常に相談を受け付ける
 ②金銭的なトラブルが発生しないよう患者さんの予算を考慮した治療を行なうこと
といったことで対応することは可能です。

病院によっては、キャッシュカードを利用できるようにして回収を確実なものとしたり、毎週定額の内金を入れてもらうことでの対応を行なっているようです。


最終的に退院時には同様に患者さんの事情を考慮したうえで、
 ①転院(医療が必要であれば)
 ②在宅(介護認定への取り組み、慢性期安定期の医療)
 ③介護施設
といった観点から地域の社会的施設や設備をも含めた総合的な退院後の生活についての援助ができるよう仕組みをつくりあげるとともに、看護師、MSWが中心となって地域連携室とともに、病棟での対応が必要になります。

看護師が常に病棟でそうした取り組みを当病院で実施している旨を説明するとともに、対応を重ねていく必要があります。

相談窓口や看護師が相談の取り込みを行い、看護師、MSW、地域連携室が患者さんと接点をもちがら対応していくことも必要ですよね〔ブログ「医療と健全経営」から一部引用〕(続く)。