何れにしても、
①具体的な技術技能
②それらを発揮するための意識や意欲、姿勢や態度
を個人教育の対象とするための方法を確立する必要があり、とりわけ後者についても
なんらかの対応をしなければなりません。
(3)教育方法
個人カルテは、あくまでも職務基準から必要な技術技能を明確にし、それを以って個人別のその段階で必要とされる技術技能を修得させるための道具として利用すること、そしてそれらに関わる日常行動から不足する部分を常にウォッチし、そこから新たな課題を発見する、といったことのために利用します。
意識をもつこと、意欲をもつこと、姿勢をもつこと、態度を改めること(以下バックグラウンド)についてまで個人カルテの対象とすることは、個人カルテの機能を不明瞭にすると考えられるからです。前述したように、それらについては別途の教育の枠組みをつくりあげていくことが必要であると考えます。
そもそも、バックグラウンドは、単純な意味での教育から生まれるものであるとすることに疑問があり、他の病院全体の取り組みにおいて、総合的に醸成されるものであると考えることが適当です。
したがって、個人カルテによる教育そのものをも含め、マネジメント全体のなかでどのように取り組むのかを幹部や管理者が意識することに意味があると考えます。
(4)バックグラウンドの育成
バックグラウンドの育成は、考え方として次のことがその方法であるといわれてきました。
①ヴィジョナリー経営
②①を受けた明確な戦略
③②を受けた具体的な目標
④③を受けた個人目標の設定
⑤職場のリーダー育成
⑥職務分掌の明確化
⑦権限の明確化
⑧役職の付与
⑨委員会活動など役割の付与
⑩明確な仕事の割り振り
⑪仕事を円滑に推進するための医療ツールの整備
⑫継続的な業務改革
⑬継続的な評価
いった柱がそれらであり、そのことによって、
①コミュニケーション強化
②チーム医療の推進
といった副次的効果を生むことにより、より組織との一体化、自らのポジションの明確化といったことを推進し、結果としてバックグラウンドをつくりあげようとするものでした。
組織におけるバックグラウンドは、組織における自らのポジションによって変遷します。当初は自己的であったものが組織のなかで他のスタッフとの融合を繰り返しながら仲間的に変化し、さらに組織を率いるポジションのなかで組織的に変化していくといった経路がそれです。
これらの自然なながれをつくりあげるために、上記の枠組みをどのように整備していくのか、そしてあらたにどのような方法を追加的に導入していくのかについて議論を行う必要があります(続く)。
「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」