よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

福山地区病院会2月定例会セミナー

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月曜日は福山で、駅前のホテルに130名の方々にお集まりいただき、「医療機関の現状とこれから」=増患と地域連携強化による医療機関勝ち残り戦略というセミナーを行いました。

(1)毎月の生活費は90万円必要なのに、所得が40万円しかない家計と同じ日本
(2)日本経済はしばらく本格的回復はしない
(3)国民は可処分所得を減らし、受療率を下げる
(4)高齢者は、益々増加し、そして2025年から減少
(5)日本が債務超過国になる時代は間近

そして、
(1)医療制度改革で民間病院は厳しい状況に置かる
(2)多少診療報酬が上がっても、焼け石に水
(3)下がる部分はこれからも、益々下がる
(4)DPCは進捗し、新機能評価係数や在院日数短縮により、DPC病院のなかで優劣がつく
(5)療養型病院は点数が益々引き下げられる
(6)リハビリテーションは若干のアップ
(7)精神病院も社会復帰が進み、点数は引下げ

さらに業態別にいえば、傾向として
(1)急性期病院は急性期に特化すればするほど収益が上がる仕組み
(2)一般病床は、DPCに進む病院と、亜急性期や在宅に進む病院への峻別
(3)回復期はリハ強化による早期治療
(4)療養病床は、医療依存度の高い患者だけを入院させる方向と地域の受け皿化へ舵を切る
(5)診療所は有床診療所を軸として、連携強化と在宅への移行を求められている
と話を続けました。

(1)DPC病院を中心としてピラミッドをつくりあげた地域の医療機関だけが生き残る
(2)そこでは、急性期→回復期→亜急性期→維持期という病院のベッドのながれと、病院→診療所=在  宅(施設+集合住宅)といった場所の変化が起こる
(3)上記を右に流れるにあたって、医療従事者の医療や看護は徐々に変化してくる
(4)役割分担を行うなかで、患者の介護・医療を行う体制が整備される

病院側は、
(1)診療報酬改定は受け止め、対応する
  ①機能分化への対応を行う
  ②連携を強化する
(2)しかし、結局は増患しなければ残れない
(3)増患のためには、内外戦略を立案
(4)医療の質の向上を図らなければ、医療資源の確保もできない。患者も集まらない
(5)業務改革と教育による体制づくりのために、多くの経営資源を投入する必要がある
といったながれをつくる必要があること。

そして、
(1)医療の質を向上させ地域に残るというヴィジョン醸成
(2)5年、10年後を捉えた戦略
(3)3年毎に中期経営計画策定
(4)キャッシュフローをベースとした事業計画立案
  ①増患対策
  ②単価アップのための政策
  ③変動費削減
  ④固定費削減
(5)マネジメントが適切に行える組織
が必要となると続けました。
 
 その後、マネジメントとして、病院には4つのものがあることを紹介し、
それら対象を峻別して、それぞれのマネジメントを強化する必要があるという説明をしました。
(1)現場マネジメント(患者さんを救う医療・看護・技術)
    →システム導入+職員スキルアップ
(2)部署マネジメント(医療の質向上、システム構築)
    →中間管理者育成
(3)固有マネジメント(業態固有のナレッジ進化)
    →専門チーム育成
(4)病院マネジメント(3つのパートにおける全体管理)
    →リーダーの学習+院内外参謀
といった内容です。

これらをさらに、
(1)HRM(ヒューマンリソースマネジメント)領域
(2)医療ツール領域
(3)管理会計領域
に区分し、それぞれ何をすべきかを伝えました。

上記を進めるためには、
(1)リーダーは思想家でなければならない
(2)夢をもたないリーダーはリーダーになりきれない
(3)リーダーは信念により自らを律しなければならない
(4)仕事に打ち込むことが成功を導く
(5)健康でなければリーダーは継続できない
(6)マネジメント力をつけなければ組織は動かない
(7)スタッフがついてきていないのであれば、何が不足しているのかを考える
(8)自分と一体となる中間管理職の育成が必須
が求められる。

 そして、以下に危機感をもつことが大切であると話を続けています。
(1)経済の推移を予想する
(2)日本の人口動態を認識する
(3)医療制度改革の方向性を確認する
(4)病院・診療所経営の業績を検討する
(5)自院の問題点を認識する
(6)自院の課題解決状況を確認する
(7)中間管理者の現状を一人ひとり確認する
(8)他の医療機関をベンチマークする

もちろん、医療従事者にも、焦る必要はないが、これからの日本の医療・介護をチャンスとして、自らの成長の場と捉える必要がある。

(1)どのような自分になるかを決める
 [例]○○の知識と経験を身につける、こういう人間になる
(2)そのための中期、短期、超短期計画を立案する
  ASCS→PDCA
(3)情熱をもち集中して、日々のスケジュールをこなす
として、覚醒を促しました。

 このほか、具体的な説明を業態別に行いましたが、結局は、積極的な危機感を持てない医療機関は淘汰される、という結論で
(1)何をすればよいのかは明確ななか
(2)リーダーとしての覚悟があるか
(3)医療従事者としての情熱をもてるか
(4)地域で残るために次ができるか
  ①計画的な医療の質向上
  ②キャッシュフローマネジメント
  ③地域連携の活発化

 短期利益計画の作り方や、具体的連携の成功の仕方、接遇は自信の発露=技術技能があって初めて相手を遇することができるといった本来の接遇の在り方などを織り込み、

 「今に満足したところからは、何も生まれない。常に一歩先の目標を設定し、進化するとこに成功がある」と話をまとめたのでした。

 セミナーの最後にも、介護療養病床はなくなるのか、うまい人事考課のやり方といった部分について理事長や院長からご質問をいただきましたし、その後開催された懇親会で、来場されていた他の先生方からから、業態別にどのように考えて戦略立案すればよいのか、指示をだすと辞めてしまう職員の指導方法や、増患はどのようにして行うのかといったご質問をいただきました。

 皆さんの病院経営に対する真剣で真摯な姿勢に、私も元気をいただいた気がします。

 今回のセミナーに及びいただいた、紅萌会理事長藤井先生、講演の機会を与えていただきありがとうございました。また、ご紹介いただいたS銀行古田さん(写真)お世話になりました。