よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医師は百貨店売り場の主任?

 ブリーフィングは短い報告という意味で、基本的には医師から経営トップに一定期間における運営内容を報告することをいいます。毎月、当月の業績をトップに報告することにより、自部門が円滑に診療活動を継続することができるよう病院から支援を受けることになります。

 報告の形式はとるものの、実際にはトップと医師とのコミュニケーションを強化し、そのことにより医師がどのようなことで困っているのか、また悩んでいるのか、あるいは積極的にどのような問題を解決しようとしているのなどを聴取し、アドバイスし、あるいは他部門との調整を行い、組織全体が最適化するよう調整を行なう目的をもっています。

 過去、医師100名以上と面談をしてきました。病院でできていないことのトップの問題は、院長と医師とのコミュニケーションをとることです。

 医師は百貨店売り場主任であり、百貨店の経営に間接的には関与しているものの、全体の売上をどうする、戦略をどうするということについては関与することができていないケースが多くあります。

 本来であれば、病院全体をどのようにしていくのか。そのなかで自分の診療科はどのような役割をもっていうのかについて納得し、そのうえで、自身の医療を行うことが適当です。結果は同じように思えますが、全体を知った上での部分であるのか、全体は全体としておぼろげながら把握しつつ、しかし、そのなかの部分は部分として取り扱われるということでは、随分と身の置き所がこなるのではないかと思います。

 病院戦略のなかで、自分はどのような治療をしたいのか、地域からは何をもとめられているのかのベクトルを合わせたうえで、日々の業務を行う。自身の役割が鮮明になり、その役割を果たすことについての
モチベーションがそうではないときと大きく異なることになります。

 毎日、自分だけ苦労して、どのような成果があがっているのかについてもよく認識できず、しかし、患者のために突き動かされながら時間が過ぎていく。満足感を得つつ、しかし、なぜか孤立した感じを抱きながら仕事をする。これが各医師が感じていることであるという意見を多く聞いています。
 
 ある医師は、当直しようが翌日あけで仕事をしようが、誰も誉めてくれないと話しました。これはすごいですね、ありがとうございます。という言葉を欲しいということではなく、お互いに気遣い、役割をもって、全体の成果を皆で喜びつつ一体感をもった仕事をしていきたいという思いであると考えます。

 専門外の患者が多い当直は嫌だ、という先生に、ではインセンティブを出せばどうですか、というと
ただちに「やります」と返答されたことがあると、どこかに書いた記憶があります。それは彼に言わせれば「お金ではなく、病院が評価をしてくれた証である。評価される、一体化できるということがよい」ということでした。

 医師は医師だから、懸命に働くのは当たり前ということではなく、医師の役割を相互に決定しながら、全体をどのようにもっていくために必要不可欠である、という位置づけをするなかに一体化したという認識が生まれるのだと思います。

 病院トップと医師との関係を強化し、医師のやりたい医療+地域で求められている医療への病院の支援。そして全体のなかでそうした活動がどのように機能しているのか、役立つのか。結果として病院が地域貢献できるというながれを早期につくりだし、激変する医療環境を乗り越えていく必要があります。

 常にお互いを理解し合い、思いやり、全体に関与してもらう。当該医師がいかに全体のなかでの役割をもっているのかについて心底から期待し、サポートするなかに信頼が生まれ、一体感が生まれると信じ、改革を進めていかなければなりません。