羽田空港でみかけたマックと第一ターミナルのエレベーターは、色そのものの特性を超えて、心地よい安定感をもたらします。マックの色合いは確かな情熱や躍動感を、そしてエレベーターは他から得られない、安らぎと安心感を与えてくれます。
しかし、実は色合いから受ける印象以上にデザイン性や色遣いの組み合わせが軽妙であることがわかります。
研究されつくされたロゴやカラーがあり、そのうえでさらに組み合わせが決定され、全体がデザインされて、なんども修正されながら自信を持ってつくられた構造であるかもしれず、そこには洗練されたプライドすら感じます。
また、エレベーターのゲートの色合いは落ち着いて、どっしりとしたデザインは人を受け入れるイメージがあります。一瞬にして、心を穏やかにする印象を体のなかにつくりだす力をもっています。
この場所だけが空港のなかでは突出したイメージを醸し出していて、ある意味おとぎの国のアリスを彷彿させる、違う媒体のなかから飛び出してきた印象すら与えます。建築家の思いが伝わってきます。
カラーやデザインは、それらがもつ背景のイメージも内包しながら、人々によい影響を与えるものであることがわかります。
同様に、私たちは何げに日々生きているなかで、カラーやデザインが私たちをどのようにみせているのかを考える必要があると思います。
衣服そのものの色や質感・デザイン、身だしなみや表情、言葉使いや声のトーンといった自分から発せられるすべての機能が、一体となって対象にインパクトを与えていることに、いまさらながらに気が付きます。
もちろん、もっとも重要であるのは、その人がどのような人であるのかということではありますが、その人の生き方や姿勢、礼儀正しさが外形にも表れてくることには間違いがありません。
あるアパレルの社長が、昔、若いときに船場で修業をしていたときの話を思い出しました。
なんど訪問しても取引をしてくれなかった問屋さんの会長に、なぜ取引をしてくれないのか聞いたそうです。
「ほなおしえまひょか」「あんさんのズボンには筋がおまへん」
といわれ、すぐにアパートに帰り、自らの姿勢を反省して、アイロンをかけ、やっと取引をしてもらったというエピソードです。
確かに外形だけではなく、話の内容や人物を人はよくみるでしょう。しかし、いかに外形がその人を表しているのかもみられることがあると考えます。
自分を表現するカラーやデザイン、そして人であることにより増える他のさまざまな要素を大切に、コミュニケーションをとっていく必要性があると、私は思います。
多少話がそれたようではありますが、構築物や構造以上に、他に影響を及ぼす要素を十分に認識し、日々行動しなければならないと改めて認識したのでした。