よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPC入院単価の高低の影響は戦略や業務改革によりヘッジする

 DPC病院がすべて残れるわけではない、とよくいわれる。確かに、DPC病院であっても単価の高い(出来高が高い、加算をとれている等)病院とそうではない病院がある。その開きはとても大きく4万円から倍違う病院まで多様だ。

 しかし、実際のところ、病院の損益構造は単価が高ければすべてクリヤーされるわけでもない。単価が高くでも患者数が分岐点を超えていなければ必要利益を得ることができないのは当然のこと。したがって、どのような診療内容を行おうと、地域の属性にあった、そして自院のポテンシャルをうまく使っている病院となることが必要だ。

 変動費率が低かったり、固定費の絶対額が小さければもちろン利益がでて、結果CF(キャッシュフロー)が確保されるため、病院は残る。ただ、調整係数の段階的な削減や、二階建て方式によるDPC病院の峻別が行われるなかで、いま良いからずっと良いというわけではない。したがって、柔軟にその都度変化できる体質をつくりあげていく必要がある。

 延べ患者数が一定であったとしても、平均在院日数が短縮されれば、病床稼働率は低下する。それは一人当たり収益が落ちていなければ問題がないが、収益が落ちていれば利益獲得機会を逸することになる。実患者数の増患ができなければならない。

 また、収益が落ちていないとすれば、良いというのではなく、空いた病床を埋めるためのやはり増患が必要となる。結局は与えられた医療資源を最大活用することが病院の使命であるからだ。
 
 いずれにしても、入院単価(日当円)が低いから、といってそれを嘆く必要は少ない。原価低減を基礎として現状に見合った損益構造としていけば良いだけの話しだ。
かつ、外来の強化により全体の収入をあげることもできる。内視鏡や外来化学療養、免疫抑制剤による治療、透析治療や新患増が外来単価を押し上げる。人間ドックを増やせる病院は設備的に余裕がある。

 結局はDPCであれ、別の業態であれ、結局は自院に合った、利益がでる戦略立案や管理を行うことができているのか、またそのために医師やスタッフの能力を最大限引き出しているかが問われることになる。
 徹底したデータ分析により医療の現状を知るとともに、HRM(ヒューマンリソースマネジメント)や、医療ツール、そしてモニタリングの道具としての管理会計といったものが整備されなければ、本当の意味でのDPCを使うことができない。

 DPC病院は単なる診療報酬請求の方法の一つであるが、DPCを活用することを目的として行われる組織改革(仕事の見直し及び個人の技術技能向上)により、大きくメリットを得ることができる制度であることがわかる。たとえ点数が他のDPC病院と比較して低いレンジにあるとしても、それに見合う組織運営ができるよう、あらゆる角度から検討して行動すること。これがもっとも大切な組織行動であると考えている。