よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院経営を支える管理会計と病院原価計算

 

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本日コクヨホールで、杏林大学の奥田先生と旭川赤十字の牧野先生とご一緒に、公私病院連盟のセミナーの講師をさせていただきました。公私病院連盟の竹内会長ありがとうございました。タイトルはこの記事のタイトルです。参加された皆様には私の稚拙な話をお聞きいただき、大変感謝しております。

 以下は、セミナーの骨子(抄録)です。

 『日本の財政は逼迫し、経済が大きく回復する見込みは殆どありません。国民皆保険制度や地域医療を守り医療を継続していくためには、各病院は合理的で質の高い医療を行う努力をしなければなりません。護送船団方式から自己責任が徹底される医療の時代には、病院経営の本質を理解し、科学的(体系的、継続的)な管理が求められる所以です。

 現状分析を行うとともに、共有できるヴィジョンを基礎とした到達点を定めます。
現状と到達点のギャップを課題化し、課題解決に向けた計画を立案します。そこでの戦略をストーリー化し組織に展開するとともに統治体制を整備、月次計画を着実に達成します。

 病院幹部が管理の対象とする領域には、部署、部門、業態、組織全体がありますが、それらの各領域で上記行動ができているかどうかを検討しなければなりません。

 定めた戦略を達成するよう組織が活動しているか、業態固有の運営ができているか、各部署がもつ機能をデザインできているか、部門が部署をうまく管理できているかを常にウォッチすることが必要です。とりわけ病院では、自己利益優先やセクショナリズムが強く働き、衝突が起こります。成果阻害要因を取り除き、成果をあげることが幹部の重要な職務の一つとなります。

 なお、計画が実行され、成果があがっているかどうかを確認するためにはモニタリングシステムが整備されなければなりません。それが管理会計です。月次決算の正確性や迅速化、予算実績管理制度、投資経済計算や指標管理、部門別損益計算、患者別疾病別原価計算などの病院原価計算が俎上に乗ります。

 ただ懸命に計画を達成しようと努力するだけではなく、常に現状を可視化し、仔細な問題を解決しながら活動しなければ、努力の割に思ったような成果をあげられません。
 予実管理や目標達成に連関する指標、部門別損益や患者別疾病別原価を明らかにすれば多くの課題を発見できます。定性評価だけではなく定量評価を重視する経営が必要です。

 頑張っているのに成果があがらない、という気持ちが職員に芽生えた途端に彼らはやる気を失います。病院幹部は戦略ストーリーを常に開示し続けるとともに、管理会計を活用した、着実に計画を達成し成果があがるマネジメントシステムを確立することが求められています』

 もちろん、管理会計は打ち出の小槌ではありません。マネジメント領域に合わせた、病院マネジメントシステムが整備されていなければ、ただ数値により可視化を行っても成果を生むことはできません。
仮説を立て検証活動を行い成果を得るための仕組みや個人の技術技能を高めていくことが求められています。あるべき経営管理を行うこと、今の時代にはそれが求められています。

 資料の最後「整理」というサブタイトルには、以下のように書かれています。
 
 『医療は労働集約的知的産業である。患者さんが来院すれば医療及び医療周辺行為が行われ、医療は完結する。しかし、それが最適に行われているかどうかは別。日々の医療行為が行われていることで、病院経営がうまくいっていると考えることは間違い。懸命に医療を行えば病院経営ができた時代は終焉を迎えた。

 病院幹部は、業態別のマネジメントシステムを徹底的に理解し、一つ一つ検証しながら成果を得ていかなければ病院を維持できない。医療の質向上への病院をあげての取り組みを支援する管理会計は重要な意味を持つ』

 多くの病院が懸命に改革を進めています。医療の質を高め地域貢献するための活動を、勢いをもって病院が実践していかなければならないと考えています。