よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ホワイトボックスがテーマとするアイテム(2)

ホワイトボックスが病院の支援をさせていただくときに、テーマとして留意するポイントは以下のものです。


1.ガバナンス体制が整備されているか

2.モニタリング体制が整備されているか

3.優れた経営企画スタッフがいるか

4.優れた医事スタッフ、あるいは診療情報管理スタッフが存在するか

5.専門部署やリスクマネジメント、パス、提案制度等を通じた業務改善が継続的に実施される仕組みがあるか

6.教育及び評価制度が整備されているか

7.公平公正な処遇システムが存在するか

8.医師のモチベーションを高める組織、仕組みがあるか


 今回は2について、説明します。

 モニタリングは、決めたことが予定通りに実施されているかどうかを確認し、課題を発見し、そして修正行動をとるよう組織に促すところまでを範疇としています。

 いわゆる管理会計領域での活動を意味しています。まずは予算実績管理。形式だけの予算実績管理が多くあります。というのも部門別損益計算をしていないため、予算がどうしても病院全体での予算になってしまうということになるからです。

 いくら病院全体での予算実績管理をしても、なぜそうなったのかが、なかなかうまく判断できません。部門別損益計算があれば、小さい単位で管理することができるため、原因分析が容易になります。
 また、同時に経営指標を管理することで、より原因分析が正確にできるようになります。

 もちろん、DPC病院であれば患者別疾病別原価計算が威力を発揮します。利益レベルで患者別、疾病別になぜ利益がでないのか、なぜ赤になったのかが明確に分析できますし、そのための対策も立てやすいというメリットを享受することができます。

 なお、特殊原価調査領域である設備の投資経済計算を実施している病院もあまり多くはありません。そうした病院においては、回収期間や投資利回りを現在価値で行うことにより、投資の是非やどこまで患者を増やせばよいのか、どのようなかたちで稼働率を向上させればよいのかといったことについての知見を得ることができます。

 また、臨床指標を設定することにより、さらに医療現場での課題が明確になり、そこでの活動における質の管理や行動管理が行えるようになり、結果として財務領域への影響を推定することもできるようになります。

 モニタリングのためには、毎月の会計処理を発生主義で行うことや、月割り経費を的確に配置して、正しい月次損益を見ることができるようにしていくことが必要です。少なくとも10日に月次損益が把握dけいる体制をつくりあげていくことが求められています。経理がうまく立ち回れないことがあるため、病院全体として、しっかりとした数値管理ができるよう業務改革及び教育を行うことが必要です。

 暗闇のなかを手探りで進むのではなく、明確な羅針盤をもつことが経営をうまく行うための要諦です。
モニタリングツールをうまく使うことにより、そうした領域での成果をあげていくことが期待されます。

 なお、モニタリングを行うにあたり、結果を期日までにあげ、その原因分析、対策を行うスタッフを配置し、その結果組織に何をしてもらうのかについてしっかりと指示できる権限が与えられる必要があります。数字がたくさんでていても、原因がわからない。また原因がわかっても対策がない、あるいは概念的である。対策があっても組織が動かない、動いたとしても成果を得られるまで継続できない、などの状況が多くの病院に見受けられます。

 徹底したモニタリングのためのシステムを全体としてつくりあげていくことができなければ、また現場は頑張っているから大丈夫といった、意識のなかだけで病院運営を行っているのでは、たとえ近い未来ですら、みることはできない時代になったということを十分に認識しなければなりません。