よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

利益をあげるための病院改革講演会

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 少し時間が経ってしまいましたが、11月に北海道病院協会函館支部 主催、㈱モロオ 共催により、H22年度北海道病院協会函館支部研修会(会場:函館国際ホテル)で「利益を上げるための病院改革」について講演を行いました。

 
1.戦略の決定及び一体化
(1)自院の方向を中期、長期で決定する
現状を分析し→到達点を決定し→乖離を確認。不足する部分を埋める解決策を検討し、それを計画に乗せ→実行し→チェックし次の行動に活かす、というながれを経営全体に構築できているのかを検証しなければなりません。
  ①医療制度改革の方向を見据える
  ②自院の経営資源を把握する
  ③業態に併せて到達点を決定する
  ④乖離をどのように埋めるのかを決定する
  ⑤そのための計画を立案し実行できる体制をつくり続ける

(2)成功ストーリーの提示
 人は、ただ医療に対する使命感だけで仕事をするのではなく、物語のなかで仕事をすることで、本来持っている力を発揮することができます。
 繁忙な毎日は、疲弊を生み組織への執着をなくします。成功のストーリーをリーダーが常に提示するマネジメントを行っているのかが盛衰を決定します。

①(1)のヴィジョン化
②医師を中心とした医療の実践(ブリーフィングシステム)
③利益は患者の評価の証である、医療資源を最大活用することが地域医療貢献
④医療と財政のバランスが大切。医療の質を合理性を以って向上させる
⑤生産性を向上させれば効率が上がることを示す

2.病院改革のためのマネジメント確立
(1)マネジメント確認不足する事項の整理
①マネジメント領域
②病院マネジメントシステム
 
(2)組織体制の見直し
①必要な人員配置ができているか
②無駄な人員が配置されていないか
③一人ひとりのスキルを高めつつ組織を変える

3.病院改革のモニタリング
(1)人を育成するためのモニタリング
①目標管理評価→日々の仕事を通じた組織目標達成を中心とした教育
②人事考課
ⅰ)能力考課→職務基準やマニュアルをメルクマールとしたスキルの教育
ⅱ)情意考課→仕事への取り組み姿勢や関わり方からの人格育成
ⅲ)業績考課→成果(プロセスや結果)への執着の育成

(2)仕組みを変革するためのモニタリング
①内部監査(ISO、業務監査、会計監査)
②15日以内の月次決算
③指標管理
④部門別損益計算
⑤(DPC病院)患者別疾病別原価計算 

4.経営ツールの効果的利用
 以下の経営ツールが重要です。これらの質を向上させれば間違いなく成果を得ることができます。
(1)ブリーフィングシステム
①医師との親密なコミュニケーション
②現状把握、原因分析、対策提示 
③実施事項の決定(医師、病院)

(2)目標管理制度
 役割をもって行動する者とそうではない者の成果には大きな差が生まれます。目標管理制度がうまく機能しているのか、又KPI(成功のための成果指標)による定量目標が設定されているかを検証しなければなりません。
①部署目標の精度
②経営方針=部署目標総和
③組織による部署目標達成支援
④個人目標への展開
⑤評価制度とのリンク(成果をあげた者は称賛され、そうでない者は学習チャンスが付与される 
=平等。前者の処遇はよい=公平公正)
⑥制度運用を通じたリーダーの育成

(3)増患(≠集患)システム
 無理やり患者を集めることはできません。以下の概念を明確にしたうえで、WGを組成しなければなりません。
①行きたい病院(医療の質向上)
②行ってみない病院(情報開示、プロモーション)

(4)本来の接遇
 笑顔、挨拶、礼節は自信の発露。自信とプライドが持てるまで医療の質をあげていきます。
①羞恥心を与えない
②恐怖心を与えない
③痛みを与えない
④納得してもらう
⑤不便を与えない
⑥不快な思いを与えない
⑦不利益を与えない
 
(5)業務改革制度
①業務改革手法の提示
②業務改善提案制度導入
③組織的対応(ゴーストバスターチームの組成)

(6)マニュアル
「暗黙知を形式知、個人知を組織知へ」がナレッジマネジメントの基本
①従来のマニュアルの考え方を変える
②マニュアルを業務改革と教育のために最適化する 

(7)職務基準
①仕事の棚卸による職務の明確化(説明資料の一部がマニュアル)
②職能等級制度導入による能力考課の徹底 

(8)会議運営
①会議運営技術の習得
②決定会議への転換

(9)(DPC病院等)クリティカルパス(改定及びバリアンスマネジメントの推進)
①指示書からの脱却
②マネジメントの基本的ツールとしての認識
③キーワード「たくさんの患者さんに来院してもらい、早く退院してもらう」

(10)退院支援計画(ディスチャージプランニング)システム
①業態別機能の的確な連携
②地域活動の強化

5.指標管理
 すべての活動は個数、金額、時間、人員、件数、枚数、%、回数等々に指標化できます。損益感
度の高い指標を残すかたちで先行指標を設定し、部門別損益計算と併せて現状把握及び原因分析を
行うために活用します。

6.部門別損益計算
 部門別損益計算を導入することにより、以下が担保されます。
①詳細にわたる損益の明確化
②迅速な会計処理
③各部署の(仮説に基づく)正確な実態把握
④損益構造を把握することでの焦点を絞ったマネジメントの実施
⑤各部署リーダーによるマネジメント力への動機喚起
⑥医療の質向上(個人技術技能向上、仕事の仕組みの見直し)
⑦疾病別原価計算の基礎情報提供 

といった内容をお話ししました。
病院戦略のストーリーづくりを行い、リーダーシップを発揮しつつ、医師を中心とした病院運営と、業務改革を徹底的に行うことがポイントだと思います。