よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医療療養病床について

 日慢協で武久先生が以前、医療療養病床は長期急性期と長期慢性期と区分し、前者はDPC類似病態別医療区分を導入し、今の医療区分を見直すという意見を出されていました。それは2018年には実行するということで私は了解していました。日慢協はそれと合せて医療療養病床のインディケータを提示し、医療の質をどのようにあげていくのかということを徹底して行っています。
 
 ホームページには、「日本長期急性期病床(Long Term Acute Care)研究会は、在院日数が限られた急性 期治療後の慢性期医療(長期急性期)の充実を目的に発足いたしました。2025年に向け て急増する高齢者人口に対応していくには、この長期急性期病床の機能を整備し、急性 期医療や在宅医療等との連携を図り、医療界全体がそれぞれの機能を十分に発揮でき るように医療提供体制を再編していくことが求められているのではないでしょうか」として、DPCの後をどのように医療療養病床が担うのかという議論をされていました。
 
 私は、医療区分1を2、2を3として患者の区分を変えて患者を抱え込む病院を多くみているため、本当にそれが達成できるのかという思いがありましたが、今回の診療報酬改定で在宅復帰率というキーワードが生まれ、それをメルクマールとして医療療養病床を運営しなければ、7;1の病床からの紹介を受けられなくなるため、医療療養病床は必至になって退院促進を行うと考えています。
 
 しかし、一方で、在総管において、点数が1000点レベルに落ちているので、本来地域循環型医療を行うために、在宅療養支援病院となりながら、施設や高齢者住宅に退院した患者さんの訪問診療ができるのかどうか
不安です。さらに訪問看護についても同一建物については、点数が減額されており、対応が難しくなります。もちろん、本当の自宅に帰る患者さんについては従来通りなのですが、やはり、限られた医療資源で、一定の質を担保し、組織を充実したうえで、在宅医療や看護を行おうとすれば、ある程度の収入は提供しなければならないのではないかと考えています。そもそも地方にいけばいくほど、一戸の自宅に訪問するのに医師と看護師が往復1時間を擁するケースも数多くあり、東京型の在宅とは異なるところがあり、現場の在宅医師からは悲鳴があがっている現状です。
 
 何れにしても在宅復帰をベースとするのであれば、医療区分3を2に、2を1にということは、事実上難しいとしても、急性期から受けた患者さんをしっかりと診るという役割を医療療養病床がもっていることは明らかです。
日慢協では、亜急性期病床の役割と長期急性期病床をだぶらせているところがありましたが、今回は、地域包括ケア病床に役割を一部渡して対応することになっており、医療療養病床から地域包括ケア病病になるプロセスが用意されているようなので、このあたりも武久先生の考え方が基礎となっているのではないかと思っています。
 
 何れにしても、在宅復帰率のあり方や実際の対応がそれほど容易ではないような気がしており、これからはまさに病院から在宅復帰が促進されるものの、実務上はどのようなかたちで落ち着いていくのかをしっかりと見守っていく必要があります。まだまだ診療報酬改定を通じた医療制度改革は進むのであり、先を見据えた対応を行うためには、積極的にいまの医療のながれを受けたうえで、何をすればよいのかについての議論を強化していくことが必要です。
 
 三次急意外、急性期の病院であったとしても、在宅を強化できないところはとても難しい局面を迎えることは間違いがなく、地域包括ケア病棟、病床も、それを大きく示唆しているのだと考えています。地域包括ケアシステムがうまくいくのかどうかは不透明ですが、各法人別には自ら工夫を行い、医療の質を上げて結果として生産性を高めて活動しなければなりません。他の記事でも話していますが、一人ひとりの職員の覚醒が求められるところです。