よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

住宅型有料老人ホームの効用

 住宅型有料老人ホームをいくつかみています。マーケットや金額、なによりも介護、看護、医療提供体制がどのようになっているのかが集客のポイントです。そもそも病院から住宅をみると、在宅復帰先ではありますが、別の意味からはサブアキュートの患者の集合体です。病院が退院支援を行うときには、片一方で増患の仕組みをつくっていなければなりませんから、どのような業態にしても紹介や外来からの入院が必要になります。
 
 住宅や施設は、通院できる患者の住処であり、彼らへのアプローチを怠ることはできません。機能分化というキーワードは得意分野をつくるということでの前提ですが、そこには地域を見る視点が必要です。Aさんという患者が、介護からはじまり急性期の患者となり、地域包括や回復期を経て在宅に戻る。そしてある時期に慢性期の患者になることもあるし、また急性期の患者になることもあるといった、患者側からみれば、Aさんを常にケアできる体制が不可欠です。未来投資会議では、地域高齢者のデータベースをつくり、一元管理しながら最適な介護や医療をシステマティックに提供していこうという試みがあります。
 
 まさに、Aさんから見た医療ができるように、各病院は対応していかなければなりません。そのための連携であり、協力関係構築なのですが、組織体が異なるため、どうしてもそこがうまくいきません。高齢者のデータベースが開示され、誰でもどこでもアクセスできるという例えばオーストラリアのシドニーで10年近く前にみた仕組みが日本にはないことが問題ではありますが、各病院がそれを少しでも自分のできる範囲でみて行くことが必要になると考えています。それはまさに自助、互助、共助、公助をうたう地域包括ケアシステムの実現のための活動の一つであり、そのために自院であるていど地域をみることが重要であることが分かります。
 
 自己完結とはいわないまでも、地域完結型医療には壁がありすぎることも事実であり、病院は自分でさまざまな病棟をもったり、住宅をもつ。在宅にでていく活動をしていく必要があるのではないかと考えています。それができれば各病院は、それぞれの立ち位置で、地域の患者や利用者をみることができ、それが集積して地域での高齢者ケアの仕組みが完成するのではないかと考えています。
 
 機能分化をいいすぎて、地域との関係がぶつ切りになるよりは、少しでも地域とのかかわりを具体的な仕事のなかでつくりだしていくための住宅保有がこれからの時代を支えます。住宅を運営することは難しく、勇気のいることではあります。そのための報酬をどのようにとっていくのかについての工夫や、職員を集めるための施策や、そもそも魅力ある病院グループをつくるための活動が求められています。
 
 しっかりとしたビジョンをもち、戦略化し、具体的な役割を明らかにしたうえで、日々行動できる組織をどのようにつくりあげるのか。マネジメントの仕組みや教育、それを統治するリーダーシップが不可欠なことはいうまでもありません。
 
 
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