よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院のマニュアルは、単なる手順書じゃないんです

一般的にマニュアルは、手順書として考えられていますが、実はすごくいろいろな効用があります。
手順、留意点、必要な知識・能力、接遇といった項目が我々が作成をお願いするマニュアルです。
業務の作業が手順、それを説明するうまいやり方やコツが留意点、そしてそれを裏付ける知識や能力を必要な知識や能力欄、さらに留意点から患者さまに関わる接遇部分(これがまた普通の接遇ではないんですよね)を抜き出して記載します。

こうした項目を整然と記載することにより、マニュアルが単なる手順書ではなく、ナレッジマネジメントの道具になります。マニュアルはパスのアセスメントツールとして、職務基準の基礎として、権限行使状況を示す権限規程への展開として、リスクマネジメントにおけるインシデントやアクシデントの発生した事実を記載する道具として、職場内教育の標準として…。え~と、それからそれから、業務改革の基礎資料として(実際、目に見えない仕事が、目に見えるようになる、っていうことは業務改革の視点を提供してくれるんですよ)、といった具合にさまざまな役立ちがあります。

マニュアルを作成してみると病棟によって同じ手技の手順が異なる、呼び方が異なる、ドクターごとに異なる、っていった具合にみえてくるものがあります。え~こんなことやっていたんだ、とかいったこともわりますし、呼び方が違うとかいったものが続出します。とりわけ、事故が起こったら、現場での検討及び対策の仮決定、委員会への報告、議論、対策決定、通達、マニュアルへの記載、教育、巡視活動、評価、発表、教育、といったかたちで事故が二度と発生しないようにすることが必要であり、そのなかだちをするのがマニュアルなんですね。

ある病院の担当者(放射線技師のマニュアル委員長)は、マニュアルをひとつひとつ検証することによって、不足する手順や留意点を理解するなかで、いろいろな業務の見直しをしていました。インシュリンの管理が複雑かつ煩雑で、もっとこうすれば簡便にできるのにと薬剤部に提案していました。

マニュアルの結構やばいぐらいすごい効用はチーム医療なんです。看護師の仕事をPTがはじめて理解することができた、とか薬剤部の方がやっと看護部のお仕事が見えてきた、とか、医事が数字だけではなく、現場の仕事をチェックすることにより、生きた点数計算ができる、ってことになったり、上記でいうマニュアルがあるおかげで、他部署の業務が見えてくることになります。それはとりもなおさず、他部署の業務を理解する、先読みする、ということのなかで相手の立場に立った仕事ができるということになります。

これは医療だけではなく、マニュアルが本質的に持っている機能ではありますが、ことさらに縦割り組織の病院のなかでは、チーム医療の推進のプロセスにおいて、太陽のように燦然と輝くことになります。

患者さんからみても、連携がうまくいっている、職員の能力が高い病院にいくはずです。肌身で感じます。マニュアルによって情報共有しているかどうかは判らないとしても、お互いにわかりあっている、お互いに業務を理解したうえで、連携した業務が行われている病院とそうではない病院では、どちらが質の高い仕事をしているのか一目瞭然です。

マニュアルを甘く見ないで下さい。皆さん。
機能評価をクリヤーするだけのマニュアル、といった形式では、機能評価をクリヤーしたとしても、結局は患者さんにバレバレです。