よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

接遇は思いと技術の発露である

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医療では、患者を心から慈しみ、彼らが安心して医療サービスを受けられるよう笑顔、挨拶、礼節、すなわち接遇は不可欠です。

 

しかし「接遇とは患者のニーズに応えること」をいうのであり、いくらよい笑顔をしても適切ではない医療を提供するのであれば、目的を達成することはできません。

 

ある病院で「笑顔で丁寧に対応してくれる看護師さんの注射が下手で痛かった。教育をしっかりして欲しい」とのクレームや、古い話ですが「病棟で、とても愛想のよい看護師さんについてもらい安心していましたが、あるときみると点滴に違う人の名前が書いてありました。気を付けてもらいたい」というアクシデントがありました。従来の接遇の意味が失われた事例です。

 

医療従事者は、挨拶、笑顔、礼節をもて患者に対応するのは当然のこととして、まずは基本的患者対応を行う必要があります。

 

そもそも医療への強い思いがあり、高い質をもつ医療従事者は、自らに誇りをもち自信をもって患者に接することができます。自信が患者への優しさにつながり、思いの表れ(発露)として自然に笑顔、挨拶、礼節が提供される。これが本来の医療の接遇です。

 

ある病院で、「〇〇さんとは、特に言葉は交わしませんでしたが、いつもてきぱきと処置をしていただき、とても安心して入院生活を送れました。ありがとうございました」というアンケートがありましたが、本来の接遇の範となるものです。

 

それでは、医療の質はどのような視点から考えればよいのでしょう。我々は、

  1羞恥心を(なるべく=以下同じ)与えない

  2恐怖心を与えない

  3痛みを与えない(心身共に)

  4納得してもらう

  5不便を与えない

  6不快な思いを与えない

  7不利益を与えない

という7つの要素から医療の質を捉えています。

 

先ほどの事例でいえば「痛みを感じないうちにあっという間に終わる採血」や「正しい処置が迅速に行われる」業務の質が求められます。

 

7つの視点から職員がもつ課題を日々の解決していくことで、医療の質は向上し、自信をもって患者に接することができます。これが医療における本来の接遇です。

 

医療行為における7つの要素のありかたを分析し、どうすれば適切に対応できるのかを考え、医療に対する思いと技術を高め続ける必要があります※。

 

※実際にはマニュアルを7つの要素からスクリーニングし、これらが充足されている手順や留意点、必要な知識が記載されているかを確認する作業を行い、不足するところを追加するとともに職場内教育で個人に徹底するという活動を行います。

 

笑顔、挨拶、礼節は、思いと技術の発露であり内心から自然に行われる、その人の生き方の表れです。

 

思いと技術を持ち、患者の立場に立ち適切な医療技術を提供することが本来の接遇である、という考え方を徹底している組織は、患者から安心され、信頼をうけ、信用される医療機関として認知され発展しています。

 

なお、実際に7つの要素を見てみると、これらの考え方は患者だけではなく、組織内外でも上下無関係(上司、仲間、部下、取引先)に人との関係性をつくりあげる基本的行動であるし、また医療や介護以外のどのような業種にも当てはまる普遍性を持っています。

 

各業種で具体的な落とし込みを行うことが有効ですね。あらゆる業種において、本来の接遇(仕事のあり方)の考え方の徹底や、それらの教育のための職務基準やマニュアルの整備そして評価システムの早急な構築が求められます。