3.行為別原価計算及び患者別疾病別原価計算
次に行為別原価計算を患者別疾病別原価計算と同時に実行します。クリティカルパスによる原価計算が行われますが、クリティカルパスには治療行為以外の詳細な行為が記載されていないことが大半であり、別途共通に実施される患者さんに対する行為が抽出されます。
病棟であれば、本日の予定説明、入院時オリエンテーション、検査オリエンテーション、手術オリエンテーション、入院時患者情報収集、観察、体交、洗髪、足浴、清拭、洗面、介助、剃毛、浣腸、処置介助、配膳、下膳、食事介助、入浴、介助、入浴指導、検査介助、患者の輸送、患者・家族へ説明指導…などあげればきりがありません。
こうしたもののコストまで管理し、抽出するためにはプロジェクトをつくり徹底した議論をしたうえでタイムスタディのための合理的な方法を導入することが必要です。
上記を含め治療及び看護、医療周辺行為についてタイムスタディを行うための前提資料を作成したうえで、タイムスタディを行います。
さらに直接材料費、直接経費といった原価要素はレセプトから、また治療間接費は部門別損益計算の資料を利用して作成した病棟単位1日入院コストとして計算され、患者別の疾病別原価計算の原価標準が作成されます。
このようにしてこの疾病についてはいくらで治療をする、といった標準原価が計算できるようになれば、DPCに移行した段階で、また今後DPCの点数が引き下げられたとき、どこをどう改革することにより適正利益を出すことができるのかが認識できるようになります。
どこをどう改革するのか、ということが業務改革です。業務そのものの見直しをマニュアルやリスクマネジメント、クリティカルパスを利用して行うとともに、教育システムの整備により個人の技術技能の向上を図りながら医療の質を向上させることになります。
そのことによって、常に無駄が排除され、質を向上させた結果として生産性の高い業務を徹底して行うことができるようになり、益々適正利益をあげることができるようになります。勿論、間接費のうち冗費についてはこれを徹底して引き下げす(合理的コストカットを行う)ことにより治療間接費を逓減させることはいうまでもありません。
DPCを導入するということは、パスの見直しを行うこと、必然的に業務改革を行うことで、平均在院日数を入院期間Ⅰに合わせるとともに、利益を出すことができるよう、病院原価計算を導入する必要があるからです。
従来出来高かDPCか、といったシミュレーションによる議論や、調整係数がどうだとか、いう話が盛んですが、ナンセンスです。DPC下で原価がいくらなのかという議論をしなければなりません。
例えば粗利を20%とるための原価構成はどうであるのか、直接材料費なのか、直接労務費なのか、直接経費なのか、治療間接費なのか、発生した原価差額を改善するために、どのような業務改革をしなければならないのかといったことについての議論が必要です。
そのために、部門別損益計算や患者別疾病別原価計算が必要であるという理解をしなければならないのです(続く)。
「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」