よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

業務改善・業務改革と内部監査の関係性

世界や日本経済がどのような状況にあろうとも、また自分がどのような環境に立っていようと、人は自らの行動を変えることを止めてはいけません。どのような生活や趣味でも、仕事や事業でも考え方は全て同じです。自分が触れるものを常により良く変え続けていくことが人として生きる証だからです。

 

今の環境を所与として、もっとうまく、もっとはやく、もっと合理的に(安く)行動できないか、もっと良い方法はないか、を考え続けることが求められています。

 

現状を他律的に捉え何もしなくても、日々合目的的に行動しても、時間は同じように経過します。振り返ると大きな差になり、自らが思考できない、経験を積めない、成長できないことの結果に対する責任を負わなければなりません

 

例えば医療制度についても国が変えなければならないことは沢山あるでしょう。しかし社会資源である医療を存続させるために、国民がもっと努力しなければならないこともあります。例えば、

 

  1. 日頃の健康管理を怠らず医療機関に全面的に依存することを止める
  2. 自らの治癒力を強く意識する
  3. 医療資源を大事に上手く活用する
  4. 懸命に生きることのなかで、しっかりとした自分なりの死生観をもつ

等がそれらです。

 

また、多くの医療従事者(や介護従事者)がそうしているように職員一人ひとりが高い使命感を持ち、その瞬間瞬間を「なんとかしたい」、患者を「なんとかしたい」、自分を「なんとかしたい」という気持をいま以上により具体的な形にしていかなければなりません。自らの技術技能や人間力を高めていくなかで、仕事の仕組みを見直し、成果を挙げていくことに自分の成長があります。

 

卑近な例でいえば、組織のリーダーや職員は日々の仕事の仕組みの見直しを行なうにあたり、どうすればもっとうまく、はやく、安く(合理的に)業務を変えていけるのかを考え行動していかなければなりません。

 

業務改善が行われるためには、いくつかの条件が整う必要があります。例えば、

  1. 思想がある
  2. 意識をもつ
  3. 着眼する
  4. 目にみえるようにする
  5. 方法を常に考える
  6. 組織を動かす

といったについて理解し、それらを一つひとつつくりあげていく試みが有益です。

 

なお、業務改善に似た概念に業務改革があります。業務改革はBPR(Business Process Re-engineering)をいいます。BPRは、業務プロセス全体を見直し再構築することをいいます。つまり仕事の前提にまで踏み込んだ見直しを行います。

 

今の仕組みを所与としてよりよくするのではなく、仕組みや環境自体を変えていくのです。

 

業務改善は、業務プロセス全体には大きな変更を加えず、

・標準化(ルール、フォーム化、マニュアル、チェックシート等)や、

・簡素化(無駄な統制、コピー・転記の排除、導線の短縮化等)

・代替(方法の変更、段取り強化による後工程の削減等)

・移管(他場所・他者への集中等)

・外注化や内製化、

・廃止(止める)等

により、業務の一部のムダをなくし、生産性を高める(仕事の質を高める)ことを目指しています。

 

しかし多くの事例を見ていると業務改善の中にBPR的な取り組みを行うことまで含めて考えるケースも散見されます。業務そのものを変える、無くす、システム化する等、業務改善を行う間にBPRまでをも視野にいれた活動に昇華することもあると考えることが適当です。

 

まずは業務改善を行い、その中での着眼により業務改革を行なうといったいった流れをつくるのが自然なのでしょう。常に業務改革の視点でも業務フローを俯瞰し、必要があれば、マネジメントサイドを巻き込み即刻BPRを行なう姿勢を忘れないことは言うまでもありません。

 

なお業務フローは内部統制(組織目的や目標達成のため組織として行うべきことを、確実に実施できるようにするための内部的なシステム=組織、権限と責任等規程、ルール、業務フロー、システム等)により管理されます。そして内部統制は大まかに内部牽制と内部監査により構成されます。内部監査は現場が業務改善やBPRを行い成果を挙げる支援を行なうための制度です。

 

内部牽制により業務が目的に合致して行われるシステムをつくり、内部監査が常にチェックを行い、内部統制が組織目的を達成できるよう監査を通じて課題を発見し、指摘することで現場に情報提供を通じてサポートするのです。内部統制はある時点で機能するだけではなく、マネジメントや現場の活動を通じ時代や環境に適合し柔軟に変化していかなければなりません。

 

ある意味、内部監査は現場のスタッフに代わり業務改善や改革を促す仕組であるとも言えます。個人や現場からのトライアルと、マネジメントサイドにある内部監査によるトライアルにより業務改善とBPRは行われることを理解し常に意識して行動することを心掛けると良いでしょう。

 

なお、内部監査は、業務改善やBPR、すなわち業務の有効性や効率性への対応以外に、コンプラ、資産の保全、財務の信頼性についてもその活動の対象としています。

 

現場スタッフは内部監査を受けることで、自らのマインドを醸成し成長の機会を得て仕事のし易さを担保するとともに、内部監査のメンバーはマネジメントサイドとのコミュニケーションを活発に行いつつ、ヒト、時間、情報、モノ、カネの経営資源の最適化のため、ここでいう

  1. 業務の有効性や効率性、
  2. コンプラ、
  3. 資産の保全、
  4. 財務の信頼性

の4つの対象を視野に入れ強い目的意識や使命感を持ち現場支援を行うことが適当です。

 

いずれにしても、どのような仕事でも、また立場にあろうとも今をより良いものに変える試みを継続し、日々成長したいものです。