よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

嵐のなかの選択

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列車は、まだ早い時間だというのに雲が立ち込め暗くなった原野を、風を切りながら疾走する。怒り狂う風は少しずつ強くなり、街には人影もまばらだ。車窓にながれる景色は、心なしか、これから訪れる漆黒の闇に抗うように大きく揺れている。

 

このまま走り続けることができるのだろうか。どこかで死の宣告が下されるのだろうかと胸を締め付ける恐怖に心をつまらせる。まとわりつく異和感から逃れるように私はそっと目を閉じた。目を閉じれば、すべてのものから逃れることができると思っているかのようだ。

 

進め、進め、もっともっと早く…。そしてできるだけ遠くにいってくれ。私は暗闇のなかで、大きな声で叫んでいた…。

 

そして時はながれ、私をまっている場所はすぐそこにきていることがわかった。私は目を開き、少し安心したようにいまから4時間前を思い起こしていた。

 

「台風のため、場合によっては伊丹空港に着陸するか、広島空港に引き返します」という告知をみたとたん、タクシーの運転手さんに、すみません(空港行きの)バスセンターではなく、駅に行ってくださいと私は伝えたのだった。

 

途中で止まることもなく、遅れることもなく、街に近づいたことを私は、すべての日本の神々に感謝をしたのだった。そうでなければ、私は迷路に迷い込んだ犬のようになすべきすべをもたず、空から舞い降りることもできず、時のながれに翻弄されていたに違いない…。

 

なんとか無事に広島から、台風のなかを新幹線で東京に帰ることができてよかった。東京駅で一人ひそかに胸をなでおろしたのだった。