よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

認定看護師サードレベルレクチャー

 昨日は、国際医療福祉大学大学院青山キャンパスで、認定看護師サードレベルの「財務管理・経営分析」の講座を8月に続き行いました(2回シリーズです)。

 看護師の幹部の皆さんが二十数名参加いただき、朝早くから力いっぱいのたのしい(?)講義を行いました。

 静態的貸借対象表からスタート、そして中世にルカパチオリが発明したといわれる腹式簿記の借方、貸方からはじまり、財務諸表の読み方、病院原価計算や指標管理といった管理会計に言及し、損益分岐点分析や在庫管理、さらに現場での業務改革全体へつなげていくながれでのレクチャーでした。
 
「財務管理と経営分析」を学習するにあたって、という資料をここで開示します。


1.目的
 看護部幹部のための「財務管理及び経営分析」を学習する目的は以下のものである。
(1)専門家になるのではない。まずは常識的な範囲で広く薄く理解する

(2)病院がどのような状態に置かれているかを自分なりに判断できる

(3)病院での実務に役立たせるレベルの到達点が判るようになる

(4)到達点に向けて、これから学習を継続していける基礎を身につける

(5)実務のなかで理論を一つ一つ確認しながら現場を変革していこうという決意をすることができる


2.学習にあたって
(1)自己変革
 目的を明確にせず、短い時間で財務管理や経営分析を学んでも、何も身に付かずに、青山で学習をしたという経験や思い出が残るだけである。

 今回、短く、しかし焦点を絞り理解したことをきっかけとして、これから現場において、さらに理解の度合いを深めていくとともに、学習の成果を行動に結実させていくことが求められている。学んだという事実ではなく、変革したという成果をあげることがリーダーの役割であるからだ。

 人は置かれてきた環境や過去の経験・知識により影響を受け、ある瞬間を生きている。しかし、自分が強く思考し、目的をもつ意思により行動すれば、過去からつくりあげられた運命から解き放たれ、大きく自己変革することができる。

 自らが覚醒し変革すればそれは他者に影響を与える。

 相互が自己変革し、成果をあげるよう行動すれば、その思いは組織全体に伝播し、組織全体を変えていくことができる。

(2)ポジション
 財務管理と経営分析は組織運営のもっとも基本的な考え方をもつ分野である。組織がどう考え、方向を決定し、組織に落とし込み、行動を誘導して成果をあげていくのかというプロセスを財務管理は示している。

 また、一方経営管理は、財務管理が立案した計画が、うまく進捗しているのかどうかを分析し、課題を発見し、解決策を検討し、具体的に行動していくための道具として君臨する。これらに優先順位をつけ、必要なことからクリヤーしていけるよう活動しなければならない。


(3)マネジメントの体系
 そもそも病院には、現場のマネジメントと病院全体のマネジメントがある。まずは現場固有のマネジメント手法を体系化し、徹底管理するとともに現場で成果をあげることができるよう誘導する必要。

 個々の現場を取りまとめて成果をあげることについては、原則現場通しが疎通を図り活動するが、俯瞰してみたときに発見される課題をなかなか解決することができない。現場が円滑に成果をあげていけるよう支援することが病院の役割である。

 現場のマネジメントを束ねる病院全体のマネジメントが必要な理由である。看護部を俯瞰して、または病院全体を鳥瞰図的にみて、利益を管理していくためには何をすればよいのかについて自らの頭で考えることが必要。

 といったことで、普段私が病院で、コンサルティングをさせていただいていることが、そのまま講義にも…、といった感じでした。

 いずれにしても、皆さん、成果をあげてきた看護師さんばかりで、とても楽しいやりとりが行われました。ただ、簿記の仕訳から始めたので、ちょっと大変だったような気がします。

 今回のレクチャーをきっかけに、皆さんが財務管理や経営分析のスキルを常に高めつつ、継続的に現場目線で業務改善や改革を行っていただけることを期待しています。皆さん頑張りましょうね~ぇ。