よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

高橋泰先生は埼玉県が好き

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 本日、日本DPC協議会の理事会で副理事長の高橋泰先生とお会いしました。

 理事会に出席し総会がはじまる前に、高橋先生とよもやま話をしていましたが、埼玉県の話になりました。

 埼玉の各医療圏では医療が足りているところもありますが、いくつかの場所では不足気味であり、和光では結構不足しているといった話をされたあと、なんでも先日埼玉県の医師の皆さんに話をする機会があり、埼玉県の現状について人口問題をテーマにされたときの話でした。

 先日新幹線に乗ったときにシートポケットに入っているWedgeという雑誌をぱらぱらしていたら、我らが高橋泰先生の高齢者は増えない、増えると誤解している人が多い。実は高齢者は2020年ごろから増加の伸び率は小さくなし、ある時期から減少していくが、それ以上に64歳までの人口が減るので、高齢者比率が上がるたけだ、という記事が目に留まりました。その延長の話です。
 
 埼玉県はもともと病院がそれほど多くないということがありますが、東京に近いこともあり、東京に結構医療を受けにいく患者の流出がある県です。

 そこで、得意の人口問題です。もとからいる埼玉居住者をネイティブ埼玉とよび、あとから来た人々を流入埼玉と呼ぶとして、いままでは、流入埼玉の人達が若く、高齢化率を抑えていたところ、彼らが年をとってくると、ネイティブ埼玉の人達も、流入埼玉の人達も、みな年をとってくるわけで、結局のところ皆年をとってくると高齢化率がどっとあがります。

 さらに東京に医療を受けに行っている高齢者が、もう通えないから地元にしよう、といって地元の病院に通院し始めると、間違いなくベッドは不足する、ということになると説明されました。

 結局のところ、
 1.流入埼玉の人々が高齢者になる
 2.東京に通院しなくなり地元で医療を必要とする
という2つの観点から埼玉県は、大変な医療不足になるとの示唆です。なるほど…。とても面白い仮説です。

 そもそも埼玉県は、小さい政府をめざし、職員が少ない、医療福祉にお金をかけないという県であるとのこと。

 そうした状況を看過するのかということを知事に説明しなければと高橋先生は続けられました。高橋先生の話を聞いた医師会の先生方も自分たちだけではこの問題は解決できない。立ち上がろうということになったということでした。

 先生は、人口問題で課題のあるところはとても気になるらしく、埼玉をとても好きな県の一つにあげていらっしゃいました。
 好きだからこそ、懸命にその地域のことを考え、医師に問題提起をし、知事に警鐘をならす。学者として、これ以上の高いactivityをもった活動はできないというほど、すばらしいことだと思います。


 そして、総会のあとのセミナーでは、3月にロシアに行かれた話から、日本の癌の手術の話になり、5年生存率が世界で最も高い。廓清(郭清=かくせい)の範囲が広く、結果として術後の生存率が高いということも話されました。

 ヨーロッパではしっかりとらず、手術の件数を増やして医師が収入をあげ、あとは放射線治療を行う式の治療だが、日本は機器の進歩に加えて,手先の器用さや熱意,術式の工夫などから,複数にわたる領域の外科手術で世界のトップクラスと評価されていて、もちろん医師の報酬は出来高ではなく、やってもやらなくても給与は増えないから丁寧に治療をするという面もあるのでしょう。

 廓清を広めにするので、生存率が高い。やっぱり癌はとったほうがいいというエビデンスであるという結論になりました。

 日本のクラス2を以前オランダで試してみたところ、はじめはオランダの医師のスキルが低いのかなかなか評判がよくなかったが、結局生き残った人達の余命がながく、やっぱり広くとるのはいいということが理解されたと話されました。

 日本の医療は凄いということを「国民」に伝えなければならないと、高橋先生は話され、ここでも、学者としての志を感じることができたのでした。

 今日は目から鱗がぱらぱらと落ちた日だったと思います。