ある病院の理事長、院長、副院長の実施事項を策定したものです。彼らの職務としてこれらを規定し、その具体的な行動につなげていくための基礎となるものです。
1.戦略決定
- どのような地域で
- どのようなターゲットに
- どのような診療活動をすればよいのか、そのために
- どのような技術をもつ医師を招聘しなければならないのか
- 外傷、関節、脊椎の患者をどう増患すればよいか、
- そのための体制をどうつくるか
- どのような仕組みをつくるか
- どのような人材育成が必要なのか、
といった病院としての計画を決定し、計画することを戦略(戦いに勝つための計画)決定といいます。戦略決定は病院の進む方向を明確にするものであり、これからの病院運営を決定づけるものです。これらを統括する機能をもつ責任者が必要です。
2.運営方針立案、推進
決定された戦略を基礎として、運営方針を策定します。外部戦略、内部戦略で決定された事項をどのように方針化し、推進していくのかについて検討しなければなりません。また、策定された運営方針を推進する必要があります。
- 戦略決定を受けてどのような運営方針を立案すればよいか、
- また立案した方針の達成活動をどのように推進すればよいのか
について検討し、実行しなければなりません。これらを統括する機能をもつ責任者が必要です。
3.病床管理
地域医療を最適化するためには、病院が保有するベッドを有効に活用しなければなりません。在院日数を短縮するなかで稼働率をどのように高めていくのか、ベッドコントロールの善し悪しで病床稼働率は大きく変動します。退院許可を医師が出し、退院指示を病棟看護師が行うといった環境をつくり、現場に病床稼働の権限を委譲するとともに、コントロールが適切に行われているかどうかを常に管理しなければなりません。これらを統括する機能をもつ責任者が必要です。
4.収支状況
病院、リハビリセンターの収支状況は、医業収益―医業費用により把握されます。
収支の全体像について事務部から報告を受け、課題を発見し対策を立てたうえで、現場に指示を出す必要があります。外来、入院、手術、検査、リハなどさまざまな要素を検討したうえで、どうすれば収支が改善するのかについて検討し、現場とのやり取りを行いつつ成果をあげるための改善活動を行っていかなければなりません。これらを統括する機能をもつ責任者が必要です。
5.行政機関対応
監督官庁に届け出が必要な書類の管理や、病院と監督官庁の間において求められる交渉や折衝を行う必要があります。
また、法定の立ち入り検査や特別の理由による訪問に対し、適切な対応をとらなければなりません。成果をあげるために、行政機関への対応をルール化しそのうえで、徹底した管理を行う必要があります。全体としては事務部の作業であるものの、これらを統括する機能をもつ責任者が必要です。
6.看護内調整
看護部内部や他部署との関係に、数多くの看護の課題があります。
それらには
- 看護部内部の問題で看護部内で解決するもの
- 内部の課題であっても、複雑で現場では手が負えないもの
- 他部署との関係や組織全体で対応すべきもの
がありますが、②以下は病院としてどのように対応するのかを決定し、調整を図る必要があります。
7.コメディカル内調整
看護部への対応と同様に他のコメディカルへの対応も必要です。コメディカルというくくりはでは解決できないほど、各部署の機能は多様であり、複雑です。看護部における課題よりも、多くの解決のための時間を割くことになります。コメディカル内部、さらには他部署との問題で、病院全体の整理が必要な事案に対し手を打つ必要があります。
8.人員計画立案
病院全体の事業計画を立案するときに、必ず人員計画が重要なテーマになります。人員計画を立案し、配置や異動、さらには募集採用といった活動を行う必要があります。それらを統括し、組織全体が必要な人員を確保することができるよう組織全体を管理しなければなりません。
9.採用
人員計画のなかで医師をはじめとした職員採用の領域がとても大切です。採用がうまくいくことがそれからの組織の盛衰を決めるといっても過言ではないケースもあります。組織の必要性に応じて、どのような人材を採用すればよいのかについて、徹底的な検討を行うとともに、採用そのものについても細心の注意を払って採用を継続することが必要です。
10.昇給昇格昇進・降格
昇給や昇格、昇進することや降格させることは、組織の安定性を担保するとともに、けじめをつけることでもあります。けじめをつけるためには、職能等級制度や適切な賃金テーブル導入のもとで、一定程度の事実が必要であり、その事実の収集を行うことや、情報分析、判断を的確に実施することが求められています。これら全体を統括し、これらの事項が円滑に進み成果をあげることができるよう管理する必要があります。
11.看護 教育
人材育成にのためには教育がもっとも重要です。一定の基準により評価を行い、あるべきかたちと評価の乖離を埋めるために教育を行います。教育はしたがってただ、集合教育的に実施すればよいのではなく、個人一人ひとりに光を当てたオーダーメイドのものである必要があります。それらをシステマチックに進めていくためには、教育のための必要なツールを作成し、適切に管理する必要があります。
12.他のコメディカル 教育
同様にコメディカルの教育に対しても、同じストーリーでの管理が求められます。
13.出張承認
出張承認を行うことは、単に承認をするということだけではなく、その内容を把握し、全体として組織がどのような活動をしているのかを認識するためのものでもあります。
出張の承認を行うなかで、各部署毎の出張数の差や、その内容の精査から、片寄を発見したり、内容の脆弱性を発見したりすることになります。
(続く)