よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

コミュニケーションと生き方

 

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 先日、出張先からの飛行機での帰り便、私はABC3列席の通路側席をとっていました。既に真んB席に中年の方が座っていましたが、私が席に座るか座らないかのタイミングで、後から乗客が来て、中央席の方が促されるように窓側の席に移りました。真ん中に座った人と窓側の人は上司と部下の関係のようでした。

 

 上司と思しき方は「来ないと思って心配した?いろいろあって遅れてすみません。ところであれはどうでした?」「結局〇〇にしました」「いくらでしたか?」「1980円でした」「ありがとうございました。ではそのまま会社にもっていってください」とお金を渡し「あなたに持たせてすみませんね」といった趣旨のやり取りがありました。

 

お分かりのように隣り合わせの二人の会話を聞かざるを得ない環境に置かれており意識して聞かないようにしても会話が耳に入ります。飛行機が離陸し、私が作業に没頭するまでの数分の間、他愛のない二人の会話は続きました。読者にその時の状況はなかなか伝わらないとは思いますが、やりとりのなかで、上司の方の話し方、声のトーンや、横目でみえる表情がこのうえなく心地よく素晴らしくとても感動しました。CAにお願いをするときにも、同じ口調であり、コミュニケーションの優れた方であることが分かります。

 

整った身なりで自信のある穏やかさ、礼儀正しく、気遣いがあり、偉ぶらない、些細な瞬間の対応にも真剣に向合い会話をしていて、相手を引き込む力があるいう印象です。こんな会話ができる上司は相当に仕事ができるだろうなと、心から思いました。元々持っている人間性がそうさせるのか、後発的に身に付けられたものかはわかりませんが、今までに経験のしたことのない強烈な感覚でした。

 

ところで、私は、人は①何かをしたいという思いをもって②信念に変え③技術を身に付けながら④人間力を鍛え⑤適切なコミュニケーションをとり行動することで⑥満足を積み重ね達成感を得て成功する。思い、信念、技術、人間力、コミュニケーション、達成感が成功に到達する6つの要因であるとして、「サクセスキューブ」という自己啓発のフレームワークを提示しています。

 

今回、豊かな人間性が滲み出るコミュニケーションを目の当たりにして、その方が他者から好感をもって受容れられて、必ず成果をあげられているのだろうと容易に想像できましたが、その裏側にしっかりとしたサクセスキューブが透けて見えた気がしたのです。

 

飛行機の隣の席に座ったお二人の会話をテーマにしたことは失礼だったとは思いますが、とても勉強になった数分間でした。

 

四位一体の改善を行うために

 

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病院は従来と同じ経営のやり方を続けるだけでは、医療を維持できない時代になりました。医療機関は常に進化し続けなければなりません。医療環境は、医療制度や経済情勢、人口動態や地域住民の動向により常に変化しているからです。

 

増患や単価アップ、医療の質向上による生産性向上やコスト削減(=コスト絶対額削減+単位当たりコスト削減)を図れない医療機関は、ながく地域医療を継続することができない状況に置かれます。

 

業務改善が必要です。業務改善は、業務の枠組みを変えたり、業務のやり方を変えて生産性を向上させる(付加価値を高める)ことをいいます。

 

前者であれば、例えば院内の診療活動だけではなく、在宅医療や介護事業に参入すること。後者はより質の高い、そして効率的な仕事のやり方に変えることや教育でスタッフの力をつけること等を対象とします。後者をまず徹底します。

 

仕事をより高い生産性をもって実行するためには、業務の棚卸を行い、それらについて手順、留意点、必要とされる能力や接遇を書き出しマニュアルを作成することからスタートします。

 

目に見えない仕事を文章化することで、どこに不効率や無駄があるのかが見えてきますし、マニュアルを基礎として仕事をする(マニュアル運用)ことで、どこを変更すれば成果が挙がり易くなるかが判るようになります。

 

リスクマネジメントや感染症対策等の活動の結果判明した課題解決、そして(急性期では)クリティカルパス(標準治療工程表)によるバリアンスマネジメント(標準からの逸脱を分析し業務見直しを行う事)による結果もマニュアルに反映し、教育につなげます。

 

「うまい」「はやい」「やすい(合理的に)」という3要素を拠り所として業務改善を行い、結果をマニュアルに反映し、それを教育することで、新しい仕事のやり方を導入し個人の技術技能を高められます。常に改訂されるマニュアルを職場内教育により周知徹底することで、生産性向上(単位当たりコスト削減)を得て高い成果をあげることができるのです。

 

マニュアル、リスクマネジメント、クリティカルパス、教育の4つをうまく連携させ活用することを我々は四位一体(よんみいったい)の改善といっています。これらを有効に活用することが必要です。 

業務改善提案制度の活用

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改善のアイデアを出し、具体的に計画し、行動する必要がある

 従来多くの医療機関で改善提案制度が導入されてきました。それらには次の問題点があります。

 ①ただ改善しろと言われても目的が不明瞭=目的(Objective)

 ②どのように改善してよいのかわからない=方法(Method)

 ③改善提案してもフィードバックがない=反応(Feedback)

 ④評価されない=評価(Evaluation)

 ⑤報償がない=報奨(Reward)

 がそれらです。ここで改善提案制度を成功させる要素をOMFER(オムファー)とよびます。

 OMFERを変え、積極的な展開をしていくことによって、業務内容を大きく変えることができます。

 まず、改善提案を行う目的は①自らの周りで改善すべきことを発見し、自らが提案して一定の成果(仕事がやりやすくなった、はやくできる、失敗しない)を得ることで自分の時間をつくり、研修や患者のための活動等付加価値業務をできるようにすること②その方法が組織において展開され、皆が恩恵を預かれること③その改善を参考に、それを理解した他の者が別の改善提案を考案できるようになること④それを受けさらに別の改善が行われ同様の効果を得られる、など改善の連鎖を起こすことです。

 相乗的に改善の成果が広がり、皆の仕事がレベルの高い仕事に変化していきます。そこでは仕事の仕組みは変わり、また個人の技術技能は向上しています。一連の改善活動により、前述のように、うまく、はやく、合理的に業務が行えるようになります。これはとりも直さず医療質向上を意味しています。それはダイレクトに患者のメリットにつながるので、間違いなく個人も組織も、そして患者も大きなメリットを享受できるのです。

  次に方法です。改善をどのように行えばばよいのかを理解できない者が数多く存在します。改善提案を行うにあたっては①仕事の見方②仕事を効率化する視点③改善提案の着眼④改善提案書の作成方法を教育します。 

 次にフィードバックと評価です。改善提案の結果は毎月フィードバックします。改善提案用紙に点数と評価をつけることで本人に返却します。やってみると評価=コメントが難しく上司の負担は増えますが、現場の課題を拾う上でも大切な業務です。評価基準には当然のこととして客観性がなければならず、

収益獲得やコスト削減への影響額を基準とする病院が多いようです。

 なお、管理を行う部署は、当該提案書をコピーしまたはスキャニングし、データとして保存します。さらに、一定評価以上(A・B)の改善については、グループウェアにタイトルとコードNOが提示されることにより、必要がある者や閲覧したいと思う者の行動を可能にします。

 そして報奨ですが、高い評価を受けて、内容に価値がある改善提案をしているとみなされた者には一定の予算を用意し、報償を与えます。

 金銭だけではなく表彰も報償の一つです。要は評価されている、承認されていると提案者が認識できることが大切です。

 上記の要件を整え改善提案制度をぜひ導入してみてください。生産性を向上させ付加価値をつくりあげるなど、必ず成果があがります。

タイムマネジメントの考え方CRISKとは

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 病院業務においてより高い成果をあげるためには、時間管理(タイムマネジメント)が必要です。タイムマネジメントは、その前提整備を行うことと、それ自体に区分されます。

(1)前提整備

 自部署・他部署とのコンフリクト(衝突)(Conflict)があると、計画的に行動しようとしても他部署とのやり取りが円滑に行えません。

 また、仕事のルールが明確(Rule)でなければ、人はいつもその場で考えざるを得ず、多くの時間を必要とします。

 さらに、仕事のルールの見直し(Improvement)が行われていなければ、環境変化についていくことができません。

 もちろん、スタッフの技術技能(Skill)が低ければ、いくら時間管理をしてもなかなかうまく結果を出せないこともあります。

 それらを斟酌した上で、上司は常に悩みのある体調が悪いスタッフを発見し、気遣い(Kindness)をもって個別の相談や適切な処置を行わなければ、彼らは思うように力を発揮できず、求める成果をあげられません。

 これらについて各事項の頭文字をとり、私たちは上記をCRISK(クリスク)と呼んでいます。

 CRISKを解決したうえで、現場の業務に時間管理の考え方を導入しなければなりません。その実行なしには時間をうまくコントロールできないことが明らかだからです。

 

(2)時間管理

 時間管理を適切に行うために、監督者や管理者は、まず自部署にある仕事の棚卸をします。

 仕事の全体量と質を把握し、優先順位をつけるとともにスタッフの能力を把握し、一定の時間のなかで段取りを行い、年間、月間、週間、毎日について、計画的に業務を実行しなければなりません。計画を立て、実行し、チェックをしたのち、修正し、さらに計画を立てるというサイクルを廻すことになります。

 なお、病院では予定外業務がよく発生します。それらがスケジュールに入り込んでくることを予想し、又担当した者が予定をこなせなくなったときに備え、常に自分や部下が一定の余裕時間をもった計画を立案すること、誰かが誰かのために業務をカバーできる体制をつくることも有益です。

 厳しい環境を迎え、医療は益々質をさげて生産性を向上させていかなければなりません。タイムマネジメントを徹底して行うために、組織をあげて対応していくことが望まれます。

 

医療機器の取得及び運用について

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ヤンゴンの空港近くにあるビクトリア病院の128列CTのパンフレット

医療には医療機器が不可欠です。 

医療機器を購入するかしないか、またどのような機器を購入するのか、病院は経営意思決定を行ないます。経営意思決定のためには、どのような手続きを経て購入し、どのように管理するのか考えます。 

機器を購入したい、と現場から稟議が上がり、そこに機器を購入しなければならない理由が記載されています。

この検査ができれば、あるいはこの治療ができれば多くの患者に来院してもらえるので必要。利用頻度や仕様(スペック)、いかに生産性が高く、コストパフォーマンスが高いのか、費用を越える収益が得られるのか、収益の源泉となる患者数は何人、診療報酬はいくらであるから、この機器の購入は妥当、といった記述が必要です。

当該機器が汎用品であれば、医療機器問屋、メーカー3社以上の見積もりをとり、他に取扱いメーカーがなければ、他の同様のスペックの機器との比較表を見積もりとともに添付すること。

 医療機器を取扱う委員会があれば、そこに資料が提示され議論されます。詳細な自院の過去治療データがあり、提案に使った予想患者数が荒唐無稽ではないことの証明や、診療報酬が引き下げられるリスクや、他病院に新たな医師が招聘され機器が導入されても競争に勝てるデータも必要です。

正味現在価値法や内部利益率法、投資回収機関法などの投資意思決定に関わる経済計算を行い、結果として、投資によりキャッシュがどれだけ増加するかや、投資回収期間〇年といったことを判断基準として投資が最終決定されます。 

投資を行った以降には、思いのほかできていない病院が多いですが、購入した後の機器の管理をおこないます。

予定通りの患者数を取扱うことができているのか、稼働率をもって経時的比較を記録しますが、稼働率が達成されているにも関わらず予定の収益が得られない場合には原因が調査され、稼働率の根拠を変え目標値を上方修正することもあります。

予定を下回った場合には、パラメディカルが医局会に出席し、オーダーを増やしてもらうよう説明したり、医事課から、対象患者が来院しているエビデンスを提供してもらいオーダーが可能であることを提示するなどの活動を行います。  

仮に対象患者が来院していないのなら、連携室やプロジェクトが対象患者増患のための行動をとるよう病院として、社会資源としての自院の活動の見直しをします。

こうした決定・運用プロセスが病院に定着していなければ、医療機器を購入してもうまく活用できずロスが生まれます。地域のためにも自院のためにも仕組みづくりが求められます。

なお、上記を検討するプロセスにおいて、購入せずリースやレンタルによる活用についての議論もされるし、自己資金で購入する、借入で購入する、割賦で購入する、購入しないという選択肢についても議論することもあり、留意が必要です。

 

仕事で好かれる要素CANとマーシー(慈悲)レベルについて

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人は一人では生きていけません。

 

誰かの助けを受けたり、誰かを助けながら社会で生活しているのです。人は、他人との関係をどのようにつくりあげるのかについて意識を振り向けなければなりません。とりわけ仕事をうまく行うためには、相手から好かれる仕事をしていくことが必要です。

 

相手から好かれる仕事をするためには、3つの要素を身に付ける必要があります。正しい仕事の姿勢(Correct attitude)、適切な行い(Appropriate action)、必要とされる人(a person Needed)がそれらです。

これらの3要素を私はCAN(できる)と名付けています。

 

これらCANが備わることで人から仕事のうえで好かれ、仕事ができるようになります。

 

「正しい仕事の姿勢」は、約束を守る、人の話を聞く、要点を整理できる、仕事が正確で迅速、前向きであることを言います。

 

また「適切な行い」は、礼儀正しい、笑顔がいい、身だしなみ・清潔である、身振り手振りがあるという態度と、誠意がある、正直である、信念があるの生き方により構成されます。

 

そして「必要とされる人」は、仕事に精通している、仕事以外の知識を持つ、先見性をもつ、創造性をもつことを言います。

「必要とされる人」になることは、とても重要です。

 

まずは仕事で得意分野をつくること、そして自分の仕事の領域以外の知識をもつことも必要です。そのうえで、常に、これからの世の中はどう変化するのか、経済はどうなるのか、自分の仕事はどう変わるのかを考えます。

 

先を読めない人と仕事をしたいとは誰も思いません。先を見ることができる人は、それに備えて何かを創りだすことがでるからです。

 

足元を固めたうえで、常に先をみて仕事ができるからこそ、人から一目置かれ、仕事ができる人だ、と認められます。

 

仕事への姿勢や態度、そして人間性をも備えたうえで、必要とされる人になり、あの人と仕事をしたいと思われれば、一緒に仕事をしたいと思われる(好かれる)ようになります。

 

ところで、私は、ある人の他人への気持ちを憎い(-4)、大嫌い(-3)、嫌い(-2)、少し嫌い(―1)、何とも思わない(0)、少し好き(+1)、好き(+2)、大好き(+3)、愛している(+4)というスコアによりいくつかのレベルに分類しています。

 

憎いと愛しているは反対の概念です。人の生命(いのち)は、相手に対する感情を常に上下させています。仕事でも同じです。

 

気に入っていた上司が酷い言葉を投げかけてきたときには、同じレベルでいられるはずはありません。

 

逆に嫌な上司が優しく接してくれればレベルは上がります。相手が思う自分のレベルを高めるように行動することが必要です。 

 

なお、「愛している」のレベルは、仕事では、何事にも代えがたいほど気に入っているという意味だとします。

 

その上のレベルには慈悲(+5)のレベルがあります。対価を求めない、相手に対する思いをいいます。これをマーシー(慈悲)レベルといいます。

 

上記で説明したCANの要件を充たし人から好かれるだけではなく、この人のためならどのようなこともしてあげようと思われる人になれるようマーシーレベルにまで自分を高めることに精進したいものです。

 

仕事で人から好かれる人になることが社会で成功するポイントだからです。

 

出典:拙著「私のマーシーレベルは∞(むげんだい)」東洋出版

 

 

絶え間なくやり取りをしながら行う意思決定(CIM)とは

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トップマネジメントは、常に経営意思決定を行わなければなりません。

一般的な経営意思決定の方法には、

 ①トップダウン方式

 ②ミドルアップ方式

 ③ボトムアップ方式

があります。

しかし、これらは特定の階層が一方的に意思決定を行い、組織を動かす方法です。

 

厳しい時代にはトップダウンによる意思決定が最適である、とか中間管理職の情報をもって意思決定の軸を決めていこう、とか、問題は現場にある、としてボトムの意見を吸い上げて意思決定を行うことが重要だ、といった考え方に基づいています。

 

ここでいうトップダウン方式においては、背景には情報の収集を意図していると考えることもできますが、実際には「経営意思決定はトップが行うべきだ」ということだけでのトップダウンメソッドが定義されています。

 

ミドルアップメソッドについても、大手コンサルティング会社によって提唱された概念で、大会社では社長はお神輿にすぎない、お神輿経営において経営意思決定を行うのは中間管理職である、といった概念を出してきていたのであり、当時においても一般的にはとてもありえない概念であるといわれていました。

 

ボトムアップが流行したときには、あたかもボトムラインが組織を経営しているような意識をもたせることによって組織を動かすことが、現場のコンセンサスを得た経営を行うことができ、ボトムからトップの間の層の仕事に対するモチベーションを高めることができるという仮説がありました。

 

しかし、それは成功せず、いまではトップダウンの反対概念としてのボトムアップという定義が残っているだけであると理解しています。

 

これらは、トップから下に、ミドルマネジメントから下に、ボトムから上に、のように、すべてベクトル(方向)が一定である経営意思決定の方式であることがわかります。

 

もちろん、トップダウンだからといって、触れたようにトップの思いだけで決めることはなく、情報収集→代替案の検討→選択というプロセスのなかで、現場からの情報を吸い上げないわけではないし、また他の方法においても、それぞれの階層が独自で組織運営のための意思決定を行うことはありません。

 

しかし、これら3つの方法は、どこからスタートするのかということだけを表現しており、真実の意思決定のありかたを明らかにしていません。

 

それはすなわち、経営意思決定をどのようなと仕組みで行えばよいのかの説明ができていないことと同義です。これでは実務に役に立つことはありませんし、場合によれば間違った経営を行う原因をつくります。

 

私は、これらの方法に対し、経営意思決定の方法としてコンスタントインターチェンジ方式=CIMを提唱しています。CIMはConstant Interchange Method(絶え間なくやり取りをしながら経営意思決定を行う方法)をいいます。

 

すなわち、トップダウンで意思決定を行うのではなく、トップマネジメントが今考えていることをいくつかあげ、それぞれの代替案を仮説として、それが正しいのかどうかについて現場に問い、さらに未知の情報を収集します。

 

情報を収集したうえでトップはさらに仮説を立て、検証のために現場に情報提供し、情報を収集します。そしてその繰り返しの後一定の結果を得て…というプロセスを繰り返すことでいくつかの代替案を検証し、最後に納得する意思をかため、自信をもって経営意思決定を行い、組織にそれを徹底し(落とし込み)ます。

 

一度に意思決定プロセスを動かすのではなく、いくつかの仮説一つ一つ(代替案)について、情報収集→評価→検討→情報収集→評価→検討というプロセスを現場の各階層と繰り返しながら、最終的に代替案を選択するという方法です。のちにトップ→ミドル→トップ、さらには、トップ→ボトム→トップのように何回でも現場との情報のやり取りを繰り返すことがCIMの肝です。

  

CIMにおいては、常にトップが中心となり、情報を集め、議論するプロセスが明確に意思決定のなかに織り込まれています。

 

従来のトップダウン方式の亜流ではなく、インターチェンジ(やり取り)することが意思決定のプロセスに含まれていることが特徴です。意思決定のためにはインターチェンジングしながら意思決定の境界線を徐々に確度の高いものとしていくことによって、意思決定の質を上げていくことを求めているのです。

 

 トップが責任をもつとしても、思いつきや感性だけでは意思決定を行うことは避けなければなりません。環境変化を察知する、競合をみる、データをみる、現場をみる、患者から話を聞く、あるいは情報を収集する、職員の仕事ぶりをみる、中間管理職と議論する、といったプロセスを経て、考えをまとなければなりません。

 

この方法では徐々に明確になるトップの考え方を説明していくことから、意思決定の事前のアナウンスメントを行うことにもつながります。

 

それだけではなく実は現場では、トップがみていること、トップから聞かれること、トップが探りを入れていることをトータルでつなぎあわせ、ミドルはミドルなりに、またボトムはボトムなりに、トップが何を考えているのかについて少しずつ理解するようになりもします。

 

これはトップが経営意思決定をするときに、それが受容される素地をつくるとともに、経営意思決定が成果をあげていくことができるよう、現場を行動させるエナジーにもなります。

 

トップマネジメントによる経営意思決定までの個々の活動は合目的的であり、常に一定の目的をもって実行されていることが徐々に組織内で理解されてくるなかで、トップが新しい意思決定を行おうとすること、そのための情報収集を行うことが組織に何か始まるぞ的なわくわく感にも似たパワーを与えるのです。

 

トップは、CIMによる経営意思決定を心がけることが必要です。

 

トップマネジメントの強い思いや的確なマネジメントが、職員を動かし組織をつくるとすれば、CIMはまさにトップがトップらしい活動をするための道具であるということができます。

 

なお、CIMは絶え間なくやり取りをしながら経営意思決定を行う方法ですが、実はCIMはトップによる経営意思決定で利用するだけではなく、どのような階層においても何かを決めるときには必要な手法です。「絶え間なくやり取りを行う」ことがどのような意思決定においても必要であり、例え短い時間で、他の階層とやり取りを行いながら情報の確度をあげて、最も優れた代替案を採用できるよう行動しなければならないのです。

 

CIMの考え方を組織に持ち込むことで、組織の力を活かすことができます。

 

この考え方を採用する多くの組織においても、CIMという概念を理解し、これをフレームワークとして使うことで、定型的に合目的的な成果を挙げられるようになります。さらに研究を重ねていきたいと思っています。