1.高級有料老人ホーム
中国有料老人ホームの入居者は原則として(というか絶対的に)自立できる人です。オーナーは日本の感覚では老人クラブという感じかな、といった説明をしていました。入居時に職業や趣味、人柄をチェックし、他者との関係をつくることができるかどうかを入居の基準としているようです。
彼らは中国が伝統的に親孝行をすることが文化である状況から脱却し、子供の生活の自由や自らの自由を獲得することを目的として有料老人ホームに入居します。
残された子供は自分が親を見捨てたとみられ、近隣から白い目でみられると感じる層に属しています。中国の文化を良識をもって維持しようとするアッパーの人々は誠実で、明るくそしてインテリジェンスをもっています。金銭的な余裕や、その位置にたどり着いたことへのプライド、そして彼らや彼らの家族が海外との関係をなんらかのかたちでもち、欧米の思考をもっていることが大きく影響しているようにみえました。
高級有料老人ホームに入居する人々は口をそろえてここでの生活はとても豊かで、友人との語らいや交流、さらには趣味に割く時間を十分にもてることに満足をしています。自然も豊かであり、施設も整い、自分達のステイタスが高いことへの満足も含め、とてもいい表情をしていると感じました。
さらに、ここのシステムは、60万元~680万元を支払うと、3年契約さえクリヤーすれば、その資金は全額!(まるまる)返ってくるので、そのこと事態も満足を増幅される要素となっているようです。
有料老人ホームを運営しているオーナーから話を聞きましたが、
①税的メリットがある
②他の事業(建築、ホテル等)で得た利益をここで利用する
③漢方医院を含めた医療事業で収入を得る
といったストラクチャーのなかで有料老人ホームが運営されているようです。
詳しくは判りませんが(質問については、詳細に答えようとした秘書をとめました)、政策的に施設型介護を推進したい政府のニーズと投資をするが税的メリットを享受できる事業家の間でのバランスがうまくとれるシステムになっているのではないかと想定されます。
900万円×500人=45億円×6%=2億7千万円(年間)で、300人のスタッフを抱え、基本的に光熱費無料、すべての清掃を含むサービス無料、必要な経費は食事24元×30日=720元、その他280元(池で釣りをするときの費用や諸々)=1000元、かつ、毎月一人100元のお小遣いまである、といった運営ができるのかとても疑問でした。
ただ、一般の職員の報酬は800元~1300元(1万2千円~2万円程度)であるとしても、ボーナスや社会保険料を含め例えば20万円(年間)~30万円の職員となり、それでも9千万円ですから、税金が0であれば、その他のコストを含めてもなんとかやっていけるのかとも思います。
そもそも北京大学附属病院の看護師の給料が1000元から1500元(1万5千円~2万2500円ですから、10倍程度の換算であるとすれば、日本では27億円の運営コストがあるということになるからです。ただ、そうやって考えると、900万円の一時金(日本のように償却なしで全額変換=倒産リスクはありますが)は換算で9000万円となり、やっぱり富裕層に属する人しか入居できないと感じます。
なお、土地は50年リースで中国政府から借りていますから超安いということでした(続く)。
「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」