よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

何があっても前進。多くを乗越えてきた看護師さんたち

 看護師のSさんは、ある大手病院から私たちの山陰のクライアントの病院に顧問として請われてきました。看護部の課題や前看護部長のできていないことを一つひとつ、絡んだ糸をほぐすように、解決してきたのです。

 看護部としてのビジョンや何をしなけれならないのかについて彼女は考えました。ベッドサイドに看護師がいないことに注目したのです。「現場に強い看護師」これが今回の改革のコンセプトです。

 そのためには、看護体制や配置の変革から、管理者、監督者、そして担当者がひとりの患者さんをきちっと看て行く。そんなかたちをまずつくる。それからそれぞれがきちっと合理的に動けるための看護プロセスの確立。そのうえでDPCを準備するためには、パスを実質的に使いこなすスキルをもった看護師を育成しなければならない。

 私たちが支援する。マニュアル委員会、リスクマネジメント委員会、パス委員会、教育委員会との連携をとりながら、それぞの看護の質を高めるための活動とリンクさせる。
 ディスチャージは、ベッドコントロールを体系的に行なうためのスタートであり、医師との連携を地域連携室と協働しならが実施する。そんななかに高密度で質の高い医療を志向する。

 院長が提示した経営方針を看護部の方針とすり合せ、看護部の活動が病院全体の一部を構成することで、全体が最適化される、そんな整合性のある活動が行えるようSさんは、新看護部長と歩調を合わせ改革を行っていくことでしょう。

 なお、指標委員会で提示された指標を看護部としてどのように目標化(先行指標化)しながら客観的な活動をしていくのかについては、これからのテーマです。
 まずは原点に戻り看護師が患者を軸としてどう活動を組み立てなおすのか、それがSさんの大きな目標となっています。

 一方のNさんは、関西にある私たちの別のクライアントの新任部長です。礼儀正しく、明るくほがらかで、彼女が若いときは、本当に天使のような看護師だったのだろう(いまでもとても素敵です)という看護師さんです。看護師はまず人間性という話をしてくれました。

 病院の会議室の前で、しばらく待たせてしまったとき、お待たせしてすみませんというと、いえ全然待っておりませんと笑顔で応えたNさん。看護部のあり方、マネジメントのあり方、中間管理者の育成の問題。病院の経営、他部署の課題。

 私たちが行なっている改革についての提言。きちっとした話し方で、自分の考えを理路整然とそしてよどみなく、落ち着いて話すことができるNさんは、一般の社会にでても、りっぱに管理職として、そしてリーダーとして仕事をこなしていける人であると思いました。

 笑顔で、はきはきと、話ができる。そして何かにめげる、といった言葉がないと思われるほど、積極的でしかし、相手を思いやり、意見をいう。ただ、問題点や解決していかなければならないことに対しては、きちっと、厳しく指摘をする。

 さらに、Nさんは、看護部をどのようにつくりあげていくのかについてのビジョンをきちっと話してくれました。仕事がら、たくさんの看護師さんや看護部長にお会いしてきましたが、Nさんは、トップクラスの看護師さんであり、尊敬できる看護部長であると思います。こんな看護部長がいる病院は、私たちの仕事もとてもし易い。成果が目に浮かぶ病院です。

 Sさんは力強く豪腕に物事を進めるタイプであり、また、Nさんは秘めたものをもちながら調整的に物事を進めるのでしょう。4月になり、皆が何かをしなければならない。何かを変えていかなければならない。何かをつくりあげていかなければならない。

 そんな風に思っている。それが大きな力となって、足元をつくる。組織を変える。そして本当に何が正しく、どうすればきちっと仕事ができていけるのかを考え行動する。

 結果、それぞれの組織がもっている機能を十分に果たし、その組み合わせのなかで社会が成り立ち、成果があがり、関与する人々がみな幸せになる。そんなながれができてくればいい。

 すてきな看護部長さんたちにお会いした爽やかな余韻が心に刻まれました。