よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

部門損益計算構築について

 部門別損益計算の構築が急務です。以下は、T病院から依頼があり、部門別損益計算の導入を行ったときの管理者会議での説明会の資料です。

 『医療制度改革厚労省により本気で行われている。制度に翻弄されることは止め、独自で利益体質をつくりあげなければならない。
 (1)自院の現状を知り
 (2)戦略立案
 (3)業務改革を実施
 (4)増患
していく必要がある。

 自院にはどのような問題があるのか、明確に整理してあるか?その場その場の対応で問題を処理してき
ていないか?小手先ではなく、根本的な部分で何を変えていけばよいのかについて情報を収集し、判断し改革していかなければならない。そのための道具の一つが部門別。
外来と病棟は直接部門。直接部門にすべての収益と費用を集め、部門別にどのような損益になっている
のかを計算し、
 ①どこが利益がでているのか、でていないのかを把握
 ②なぜなのかを検討
 ③原因を取り除くための行動
を行い、結果として利益をだす。

 自院がどのような状況にあるのかについて①財務分析②指標管理はほぼ、どの病院も着手している。しかし、自院が(それも部門別、診療科別に)どのような損益構造になっているのかについては、意外と把握していないことが多い。
 収益の比較だけでは判断できない利益について、各部門や診療科別に情報を収集しなければ、何をどう変えてていけばよいのかについての対策がとりえない。

 正しい部門損益や診療科別損益計算を行うために
は、以下が前提。
(1)迅速かつ正確な会計
(2)各部門の活動情報を収集できる体制
(3)継続的に部門損益、科別損益を把握し、課題を発見できる体制
(4)発見された課題を解決するための仮説を検証してくための具体的活動


(1)各病院同じ収益でも、損益が異なるように各部門、各科も同じ収益でも損益は異なる→収益だけみていればよいわけではない

(2)各部門がどれだけ経費をかけて、その収益を得ているのかをつぶさに把握しなければ、病院全体の利益をコントロールすることができない
  →同じ収益でも経費が病院によりまったく異なる

 部門別損益計算を実施する手順は以下のもの。
(1)会計処理が正しく行なわれているかの検証
(2)どの部門で管理するのか
(3)どの勘定科目を使うのか
(4)どのように配賦するのかの情報の検討
(5)情報収集(配賦のための基準)の指示
(6)シートのフォーム決定と作成開始
(7)仮稼動によるチェック
(8)修正
 
 原価分析プロセスは次のもの。
(1)管理可能損益での分析
(2)配賦後の営業損益での分析
(3)収益は管理指標により分析し、課題を発見
(4)原価は要素別に分析し、課題を発見
(5)課題を解決するための行動への落とし込み
(6)行動実行による課題解決

 部門別診療科別と患者別は次のように考える。
(1)まずは部門別損益計算を実施
(2)混合病棟は一定の法則により診療科別に再計算
(3)患者一人当たりの治療間接費の計算は部門別原価計算ができなければできない
(4)患者別疾病別原価計算は部門別原価計算が前提
(5)包括対応のためには、最終的には患者別疾病別原価計算が必要

 部門別損益計算が急務である理由は次のもの。
(1)いずれすべての病床は包括になる
(2)部署別(部門別)の損益をみなければ経営がなりたたない
(3)ブリーフィングのためには、エビデンスが必要
(4)目標管理においても利益をもって目標を設定することが必要
(5)部門別損益を計算することからあらゆる課題解決に向けた対応ができるようになる
 
 部門別損益計算を行わずして、なぜ病院の経営課題を体系的に発見できるのか、とても不思議である。
定量化された管理を指標管理で行うことをも含め、早急に新しい管理体系を構築しなければ、時代からとりこされることは必至です。

 これらを理解し、まずは部門別損益計算を正規の簿記のなかにビルトインし、部門別損益計算を行った結果として月次が計算される仕組みをつくりあげなければなりません。