よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医療における教育の大切さ(1)

 教育には3つの柱があります。
 職場内教育と集合教育、そして自己啓発です。組織で、教育に時間とコストをかけることがなかなか難しいという状況があります。

 人に何かを教えるということよりも、できる人が自分で何かをする、ということのほうが早く結果を出すことができるという事実です。これは真実です。

 しかし、中長期にみると、当該個人がいつまでも同じパフォーマンスを行うことができないし、ケースによれば組織のパフォーマンス量を拡大することができないものがあります。組織の組織たる所以である、個人の力が相乗して総和よりも大きな力を生みだすことができないのです。

 したがって教育はある意味業務の一部であるという認識をもつことで、組織づくり=人の育成に力を割く必要があります。もちろん、仕事は人があるべきかたちで動く前提として、業務改革が恒常的に実施されなければならず、そのための取組も必要です。仕事の仕組みや制度、手順やルールが常に作り直されるなか、個人も教育されるというながれがつくられることがベターであり、教育と業務改革が並行して行われることが有効です。

 しかし、個人が教育されていなければ、これもできない。まずは一人ひとりが持てる力をすべて発揮できるよう個人教育が行われる必要があります。であれば、まずは職場内教育に取り掛かる。職場内教育をどのように行うのかをまず考えます。
 
 (1)教育のツールづくり
 (2)教育の方法
 (3)モチベート手法

が議論されなければなりません。
 (1)については、職務基準とマニュアルが必要です。職務基準についていえば、①業務棚卸②入職年次毎区分が行われる必要があります。そしてマニュアルですが、①一つ一つの業務の手順化③ノウハウ付加という手順で行います。

 (2)については(1)を使い、一人ひとりの課題を出し、個人カルテにて、教育課題解決のためのPDCAをつくりあげることが適当です。個人カルテシステムは当社が確立した、一人ひとりの課題を継続して管理する医療ツールですが、間違いなく自らの問題を解決し、成長することを担保するものです。

 (3)は、自ら学ぶことに対するインセンティブづくりです。重要なことは組織運営のためのストーリーがあるかどうか、それを自分たちが達成することについて受容できているか、といったことが問われます。

 報酬も下方には位置しますが、まず、医療に対する良心と思想をもったリーダーが、常にヴィジョンや戦略を語り続けること、明確な目標をつくり一人ひとりに役割を与えることが基本となります。

 仮にトップマネジメントリーダーが不在であっても、ミドルマネジメントにリーダーシップをとれる者が複数人存在すれば、成果をあげることはできると考えます。

 なお、上記を軸とすると、他の医療ツール構築はすべてリンクして対処することができるようになります。なぜならば、パスにしても感染症対策を含めたリスクマネジメントについても、看護プロセスの確率についても、すべて業務改革による進化を内包した仕組みだからです。
 次回には集合教育について説明します(続く)。